歯科医院の経営において、M&A(合併・買収)は重要な戦略の一つです。
近年、歯科医院の院長の高齢化や後継者不足が進む中、M&Aは事業の継続や拡大、さらには競争力の強化を図る手段として注目されています。
本記事では、歯科医院特有のM&Aのメリットやデメリット、成功のポイントについて詳しく解説します。手続き方法や重要なポイントを交えながら、歯科医院がM&Aを成功させるための基礎知識やリスク管理の方法についても掘り下げていきましょう。
この記事の内容
歯科医院のM&Aとは一体何?M&Aの基礎知識
歯科医院のM&Aとは、一体どんな戦略なのでしょうか?ここでは、M&Aの基礎知識と、歯科医院がM&Aを行う理由について詳しく紹介していきます。
事業継承や居抜き売却とは違う?M&Aの概要
M&Aは「合併・買収」のことで、事業継承や居抜き売却とは大きく異なります。企業や個人がM&Aを行うのは、既存のサービスを拡大したり、経営を継続したりするためという理由が大半です。また、M&Aは業種によって必要な手続きが異なるため注意が必要です。手続き方法に不安がある場合には、仲介サイトなどを利用すると安心ですね。
歯科医院がM&Aを行う理由
歯科医院がM&Aを行う理由は様々ですが、多くは院長の高齢化などによる後継者不足や競争力の低下などが挙げられます。
また、自院で行っていない診療科目のある歯科医院を合併・買収することで、幅広い患者に対応できるようになり、経営の安定を図れるのも理由の1つです。
歯科医院におけるM&Aのメリット・デメリットを紹介
歯科医院がM&Aを行う時のメリット・デメリットには、一体どんなものがあるのでしょうか?ここでは、それぞれの内容について、詳しく紹介していきます。
メリット | デメリット |
---|---|
・開業・廃院のコストを抑えられる ・従業員の持つノウハウを継承できる ・従業員の雇用を継続することができる |
・従業員や患者が離れてしまう可能性がある ・医療機器などの老朽化 ・診療方針が異なる場合がある |
M&Aのメリット
M&Aでは、既存の歯科医院を引き継ぐ形となるため、新規開院のためのコストを抑えられます。また、後継者不足による廃院を防ぎ、従業員の持つ技術やノウハウ、雇用を継続させられるのも大きなメリットとなっています。
M&Aのデメリット
M&Aを行うデメリットとしては、引継ぎの際に従業員や患者が離れて行ってしまう可能性があることが挙げられます。しかし、従業員への補償や患者への丁寧な説明を行うことで、リスクを最小限に抑えられます。
また、既存の歯科医院を引き継ぐ場合には、医療機器が老朽化していたり、診療方針が異なる場合があります。M&Aに向けた協議の中で事前にしっかりと確認しておけると安心です。
歯科医院におけるM&Aでのリスクとは?
歯科医院のM&Aには複数のリスクが伴います。主なリスクとしては、患者の流出や従業員のモチベーション低下、診療方針の不一致などが挙げられます。
また、場合によっては高額な費用が発生したり、適切な後継者が見つからない場合は事業の継続が困難になる可能性があります。
これらのリスクを事前にしっかりと把握し、交渉段階で問題点をクリアしておくことが、スムーズな取引とM&Aの成功に繋がります。
歯科医院のM&Aの手続き方法とは?
歯科医院のM&Aの手続きでは、下記の5つのステップによって進められます。
- マッチング
- 基本合意
- 買収監査と企業調査の実施
- M&A契約の締結
- 成約
それぞれのステップについて詳しく紹介していきます。
STEP1:マッチング
まずは、M&Aを希望している歯科医院とのマッチングです。適切な買収対象または買収者を見つけるためには、M&Aの専門家に相談するなどし、候補となる歯科医院をリストアップしていきます。
この段階で、事業の相性や将来の診療方針などをしっかりと確認しておくと安心です。
STEP2:基本合意
マッチングが済んだら、交渉に移ります。双方が交渉を進め、基本的な合意に達したら、基本合意書(LOI)を締結します。
この基本合意書には、一般的に買収条件や価格、買収までのタイムラインなどが記載されることが多いです。
STEP3:買収監査と企業調査の実施
基本合意後は、「買収監査」と「企業調査」を実施します。買収対象の歯科医院の財務状況、法的問題、運営の実態などを詳細に調査していきます(デューデリジェンス)。
この調査を通じて、基本合意時の交渉では見えていなかったリスクを発見できることもあり、買収に向けて適切に評価することが大切です。
STEP4:M&A契約の締結
すべての調査が終わり、双方が合意に至ったら、正式な買収契約を締結します。この契約には取引条件、支払い条件、保証・保障条項などが含まれています。
STEP5:成約
契約に基づき、買収代金を支払うことで、事業の権利が正式に移転し成約となります。成約後は、本格的な事業の引き継ぎと移行作業が開始されます。
歯科医院のM&A手続きの注意点!4つのポイントを抑えよう
歯科医院のM&A手続きには、注意点が多くあります。ここでは、特に注意が必要な4つのポイントを紹介します。
ポイントをしっかりと押さえ、スムーズな手続きを進めていきましょう。
ポイント1:M&Aの目的を明確化する
どうしてM&Aを行いたいのかという目的を明確化することが、M&Aを進める大切なステップとなります。
歯科医院がM&Aを行う目的としては、主に事業の継続や拡大、競争力の強化などが挙げられます。その中でも、特に重要なのは何か、ハッキリとさせておきましょう。具体的なビジョンを持つことで、その後のM&Aのステップをスムーズに進められますよ。
ポイント2:M&Aを行う対象は比較・検討を丁寧に行う
M&Aを行う場合、買収する歯科医院の特性や業界の動向を把握する必要があります。そのため、買収する歯科医院の財務状況、法的問題、運営の実態などを詳しく調査しましょう。
買収候補となる歯科医院を事前にしっかりと比較・検討することで、M&Aのリスクを最小限度に抑えることができます。
ポイント3:素早くアプローチする
M&Aは、時間的にも経済的にも高額な取引になりがちです。また、現状の経営状態が良い歯科医院ほど、買収希望者は多く現れます。
素早いアプローチは時間的・経済的損失を最小限に抑えられ、希望条件にマッチした相手をスムーズに見つけることができます。
ポイント4:専門家に協力を依頼する
歯科医院のM&Aは、とても複雑です。特にマッチングや企業調査は、専門知識がないと上手くいかないことも多いでしょう。
そこで、専門家に協力を依頼することで、マッチングの相違や調査不足などのリスクを最小限に抑えることができます。
またM&Aの専門家は、歯科医院の特性や業界の動向を理解していることが多いので、適切なアドバイスを受けることができるのも嬉しいポイントです。
歯科医院のM&Aにおすすめの仲介サイト
ここでは、歯科医院のM&Aにおすすめな仲介サイトを2つ紹介します。どのサイトも歯科医院のM&Aに関する実績があるため、初めてのM&Aでも安心して任せられるでしょう。
サービス1.株式会社ストライク
本社 | 東京都千代田区大手町1丁目2番1号 三井物産ビル15階 |
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設立年月日 | 1997年7月 |
公式サイト | https://www.strike.co.jp/industry/medical/ |
ストライクは医療法人に特化したM&A仲介業者です。業界に精通したメンバーで構成されているため、昨今の動向をしっかりと把握しながらスピーディーな対応を可能にしています。
また、お相手が見つかるまでは完全無料となっているため、たくさんの候補の中からじっくりと選べて安心です。候補探しでは専任担当制かオールストライクでのマッチングのどちらか好きな方を選ぶことができるのも特徴の1つとなっています。
サービス2.株式会社MAポート
本社 | 東京都渋谷区恵比寿1-8-5東洋ビル7F |
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設立年月日 | 2011年1月4日 |
公式サイト | https://www.maport.jp/lp/dental/ |
MAポートは歯科医院専門の完全成功報酬型のM&A仲介業者です。成功報酬型のため、まだ検討段階でも気軽に相談できます。
また、歯科医院専門のため業界に関する知識も豊富で、人脈を駆使したスピーディーな対応が高評価を得ています。
売る側の気持ちに寄り添った対応を心掛けてくれるので、買い叩きなどのリスクを減らせるのも高評価に繋がっていました。
歯科医院のM&Aについてよくある質問
ここでは、歯科医院のM&Aに関してよくある3つの質問について紹介します。
- M&Aに関する費用はどのくらい?
- 歯科医院のM&Aでの成功例は?
- M&Aは個人でもできますか?
疑問点を1つでも減らし、M&Aを成功させましょう。
M&Aに関する費用はどのくらい?
M&Aでは、通常数百万~数千万円で取引されることが多いようです。ただし、M&Aを行う医院の規模によっては数億円かかったという例もあるため、一概には言えません。
また、仲介業者を使用しての成約の場合には、仲介手数料も上乗せされるため注意が必要です。仲介業者の中には、目安となる金額を事前に掲載していることがあるので、気になる場合には先に確認しておくと安心ですね。
歯科医院のM&Aでの成功例は?
歯科医院のM&Aでの成功例で多いのが、親族内での継承や、元々勤務医として働いていたスタッフへの継承です。これは、元々のスタッフとしっかりと話し合い、M&A後の経営方針・診療方針について多くの理解を得ることができたためとされていました。
また、医療法人同士のM&Aにも成功例が多く見られます。仲介サイトでは成功例を詳しく紹介していることもありますので、参考にしてみてください。
M&Aは個人でもできますか?
M&Aは個人でもできます。ただし、M&A成約後の経営能力や料金の支払い能力があるかどうかも大切なポイントとなってきますので、準備が必要です。
また、個人間だけでなく、株式会社など医療法人以外でも行えますよ。
まとめ:歯科医院のM&Aは雇用や医療サービスの継続に効果的だった
歯科医院のM&Aは、歯科医院の継続や拡大、競争力の強化を目的として行われる戦略です。雇用や医療サービスの継続に効果的ですが、歯科医院のM&Aには専門的な知識が必要となってくるため、注意が必要です。そのため、歯科医院の特性や業界の動向を理解し、適切なアドバイスを提供してくれる仲介サイトへ依頼することも選択肢の1つとなっていました。
また、歯科医院のM&Aに関する費用は、買収対象の歯科医院の規模や業界の動向によって大きく変動するため、事前の準備が大切となります。具体的な目的や譲渡後の経営方針を明確化することがM&Aの成功に繋がるので、注意点に留意しながら行動を起こしていきましょう。