クリニックの新規開業において、希望通りの物件探しに苦戦される方もいるでしょう。
そこで候補となるのがテナント開業。テナント開業は、新築戸建よりも費用をおさえられる反面、いくつか注意点もあります。
本記事では、クリニックのテナント開業における、7つの注意点やチェックポイントを紹介します。クリニックの開業を検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。
この記事の内容
クリニックにおけるテナントの坪単価
立地条件やエリアによって違いはあるものの、クリニックをテナント開業する際の坪単価は、30~60万円程度とされています。
クリニックの新規開業に伴い発生するのは、内装設計・内装工事です。
なお、内装工事の費用には、設備工事や設備機器の他にも、備品購入費用などもかかります。費用の算出方法はそれぞれ異なることに留意しましょう。
- 坪単価から算出
- 総工事費から算出
- 人件費や技術料から算出
坪単価で算出する場合、10坪以下では割高になる場合があります。一方、総工事費からの算出では坪数に関わらず、総工事費の10~15%が相場です。
人件費は人数が多いほど増え、特殊な工事は技術料が高くなる可能性があります。
クリニック開業におけるテナントのチェックポイント6つ
それでは、クリニックの開業にあたってチェックしておきたいポイントを6つ紹介します。
- 立地条件や交通アクセスが良いか
- テナント料が予算に合っているか
- 外観がクリニックに適しているか
- クリニックに必要な設備が揃っているか
- 隣接するテナントの業種は適切か
- 安全性を担保できるか
立地条件や交通アクセスが良いか
テナントは、立地条件や交通アクセスが良いかを確認しましょう。
クリニックの経営を安定させるには、多くの人に認知してもらう必要があります。
交通アクセスが悪ければ、体調不良や持病を抱えた患者の通院は容易ではありません。
最寄り駅からは近いものの、駐車場から遠かったり、階段の上り下りが必要だったりすると不便に感じる可能性があります。
かかりつけ医として選んでもらうには、立地条件や交通アクセスの良さが重要です。
テナント料が予算に合っているか
テナント料が予算に合っているかも重要です。
一般的にテナント料の目安は、収入の6〜8%とされています。
エリアや面積によっても変わるので、予算に合っているかを確認しましょう。
なお、開業してからしばらくは、集患が思うように行かなかったり、借入金の返済が経営に影響したりすることが想定されます。
予算に合っているものの、始めの数ヶ月間の懸念がある場合は、値下げ交渉してみるのも手です。
外観がクリニックに適しているか
外観がクリニックに適しているかも重要です。
テナントビルの場合、外観からだけではクリニックの状態を確認できないことがあります。
築年数が古いテナントビルで壁が汚れていると、良い印象を持たれないかもしれません。見た目の印象は、階段やエレベーターも同様です。
患者に好感を持ってもらえる外観であるかを確認しましょう。
クリニックに必要な設備が揃っているか
クリニックに必要な設備があることは必須です。
電気設備が整っていても、契約アンペアがクリニックに必要な電気容量に満たなければクリニック経営に影響しかねません。
停電時に備えて、バックアップ用発電設備の有無も確認しましょう。
隣接するテナントの業種は適切か
隣接するテナントの業種が適切かも確認しておきたいポイントです。
飲食店に隣接しているとニオイに、大音量の音楽や会話が目立つお店なら騒音に悩まされるかもしれません。
テナントを決める際は、居心地の良さを意識して隣接するテナントの業種も確認してください。
安全性を担保できるか
クリニックは安全性を担保できるかも重要です。
まず確認したいのが耐震性です。1981年の6月以降に建てられた建物なら、新耐震基準が適用されています。築年数は浅いほど望ましいでしょう。
また、アスベストにも注意が必要です。
平成18年9月から、建物にアスベストを使用できなくなっています。平成18年9月以前に建てられた建物は注意してください。
クリニックをテナント開業する3つのメリット
次に、クリニックをテナント開業するメリットを3つ紹介します。
- 初期費用をおさえられる
- エリアの選択肢が増える
- 撤去や移転も手軽に行える
初期費用をおさえられる
テナント開業の最大のメリットは、初期費用をおさえられることです。
戸建てクリニックで開業する場合は、1億円を超える高額の費用がかかります。
初期費用をおさえられれば、浮いた分を設備投資に回せるでしょう。
エリアの選択肢が増える
エリアの選択肢が増えることもメリットです。
駅ビル内や大型商業施設内など、立地条件や交通アクセスの良い場所で開業できれば集患もしやすいでしょう。
好立地になるほどテナント料は高くなりますが、軌道に乗れば収入アップも期待できます。
撤去や移転も手軽に行える
テナント開業は、撤去や移転が手軽に行えるのもメリットです。
戸建てクリニックでは、自己所有物の撤去や移転を容易に進められません。
いずれ移転を検討しているのであれば、テナント開業は向いているといえるでしょう。
クリニック開業でテナント契約する際の注意点7つ
では最後に、クリニック開業でテナント契約する際に確認したい7つの注意点について解説します。
- 新しい医療機器を設置できるか内装を確認する
- ランニングコストが嵩む可能性がある
- テナント物件の電気容量をチェックする
- 契約期間を把握する
- ビルのルールやオーナー意向を確認する
- 貸借契約書に特約事項を明記する
- テナントの場合は広告・宣伝に制限がつく可能性がある
新しい医療機器を設置できるか内装を確認する
クリニック開業でテナント契約する際は、新しい医療機器を設置できるか内装を確認しましょう。
サイズが大きい医療機器の場合、テナントのスペースには設置できない可能性があります。
また、設置スペースを確保できていても、階段やエレベーター、ドアなどの搬入経路を確保できなければ設置できません。搬入経路も確認しておきましょう。
ランニングコストが嵩む可能性がある
クリニックのテナント開業では、ランニングコストにも注意してください。
初期費用をおさえられても、ランニングコストで相殺される可能性があります。
ランニングコストとしては、家賃の他に広告費用、スタッフに支払う人件費、医療機器のリース代、光熱費などがかかります。
クリニックをテナント開業する場合は、ランニングコストにも注目しましょう。
テナント物件の電気容量をチェックする
テナント物件の電気容量をチェックしてください。
医療機器によっては電気消費量の多いものがあるでしょう。
クリニックの入居を想定していない場合、電気容量が足りず医療機器を使用できない恐れがあります。
テナント物件で、必要な医療機器を使える電気容量を確保できるかを確認しましょう。
契約期間を把握する
契約期間の把握も大切です。
定期借家契約は10年以上契約できません。
契約期間が決まっている場合、期間より前に退出しても家賃を払い続ける必要があるため、余計なコストがかかります。
契約前には、契約方法や期間を確認してください。
参照:国土交通省|定期借家契約
ビルのルールやオーナー意向を確認する
ビルのルールやオーナーの意向は契約前に確認しましょう。
利用時間や曜日が決まっている場合、利用可能な時間帯や曜日以外の診療はできません。
レイアウト変更がNGの場合、院内導線に影響が出る可能性があります。
ビルのルールやオーナーの意向は、しっかりと確認してください。
貸借契約書に特約事項を明記する
賃貸契約書に特約事項が明記されているかも重要です。
現状は大丈夫でも、将来的に周囲のビルに同業者やクリニックの運営に悪影響のあるテナントが入る可能性もあるでしょう。
安定したクリニックの運営の実現に向けて、影響のあるテナントに入ってほしくない場合は、契約書に影響のあるテナントを入れない旨が記載されていなければなりません。
ただし、借りる側が決められることではないため、オーナーの了解を得る必要があります。この場合、オーナーが快く同意してくれるとは限らないので注意が必要です。
テナントの場合は広告・宣伝に制限がつく可能性がある
広告や宣伝の制限がないかも確認しましょう。
テナントの場合、広告や宣伝に制限がつく可能性があります。
クリニックの看板を出すと外観を損ねるといった理由から、看板を禁止していると患者への周知ができません。
クリニックの運営にも影響することなので、広告や宣伝の制限を確認してください。
まとめ:クリニックのテナント開業は条件を確認して行おう
クリニックの運営のテナント開業は、初期費用をおさえられることや、好立地なエリアを選べるといったメリットがあります。
しかし、ビルのルールや設備によっては、クリニック開業に適さないこともあるでしょう。
クリニックのテナント開業を検討する際は、立地や条件などをしっかりと確認したうえで、慎重に判断してください。