近年「電子カルテ」という言葉を耳にする機会が増えたのではないでしょうか?
さまざまなモノがデジタル化される中、カルテもデジタル化される流れが進んでおり、デジタル化されたカルテのことを電子カルテと呼んでいます。
しかし、「紙のカルテと電子カルテとでは、何が違うのかわからない」「電子カルテにいこうするのはめんどうだから、なるべく紙のまま使いたい」と考えている方も少なくないはずです。
そこで、この記事では電子カルテへの理解を深めることを目的として、電子カルテとは何か、また電子カルテを導入するメリット・デメリットを解説します。
記事の後半では、電子カルテへ移行する際の方法やポイントも解説しているので、ぜひチェックしてみてください。
この記事の内容
電子カルテとは?
電子カルテとは、簡単にいえば紙カルテを電子化・デジタル化したものです。
ただ、電子カルテはそれだけにとどまらず、さまざまな医療関係のシステムで中心的な役割を果たします。
オーダリングシステム、臨床検査システム、薬剤システムなどのシステムを電子カルテを中心として連携させることで、患者の情報を保存し、検索・分析をしやすくしています。
すなわち、デジタル化が進む医療業界において、欠かせないシステムになりつつあるのです。
電子カルテを活用できるようになる一歩目として、電子カルテについての基礎知識を理解する必要があります。
以下で、メリットやデメリット、紙カルテからの移行方法について解説するので、それぞれ確認していきましょう。
電子カルテを導入するメリットは?
電子カルテを導入するメリットは、主に以下の3つが挙げられます。
- 情報管理がしやすい
- 業務の効率化
- 間違いが減る
それぞれのメリットを以下で詳しく見ていきましょう。
情報管理がしやすい
1つ目は、情報管理がしやすいことです。
紙カルテでは、膨大な量のカルテから患者のカルテを探さねばならず、検索するのも簡単ではありません。
しかし、電子カルテであれば情報が一元化されてるだけでなく、検索を用いることで、必要なカルテを迅速に見つけられます。
さらに、他のシステムとの連携ができていれば、予約情報や会計システムなどの必要な情報も一元化されているため、とても便利に使えます。
業務の効率化
2つ目は、業務の効率化です。
先ほど解説した通り、ほとんどの情報は一元化されることになります。
そのため、いちいち書類を探す手間・時間が省け、業務が効率的に行えるようになるのです。
業務が効率化すると、院長先生は本来の役目である診療に集中でき、スタッフは多忙な業務から解放されるため、快適に働けるようになります。
間違いが減る
3つ目は、間違いが減ることです。
紙カルテでは、手書きの文字が読みづらいことによる伝達ミスにより入力を誤ったり、間違えて転記してしまう可能性もあります。
しかし、電子カルテでは手書きの文字や転記は不要になるため、間違いが減ります。
間違いが減ることで、余計な業務が発生する可能性が低くなり、時間的にも精神的にも余裕を持って業務に取り組めるようになるでしょう。
電子カルテを導入するデメリットは?
一方、電子カルテを導入するデメリットは、主に以下の3つが挙げられます。
- 運用までに手間がかかる
- コストがかかる
- 停電時に利用不可
それぞれのデメリットについて、以下で詳しく見ていきましょう。
運用までに手間がかかる
1つ目は、運用を始めるまでに手間がかかることです。
紙カルテでは、紙を用意してカルテをしまう場所を確保すれば十分です。
しかし、電子カルテでは、初期設定をしたり、紙カルテの情報を電子カルテに移動したりしなければいけません。
また、電子ツールに対して苦手意識を持っているスタッフもいることが想定されます。
簡単な操作で使える電子カルテもありますが、「操作方法を一から教えてほしい!」と希望する可能性があります。
この場合は、使い方を手取り足取り教えなければならず、時間・手間が多くかかってしまうのです。
コストがかかる
2つ目は、コストがかかることです。
電子カルテを利用する場合は、初期費用や月額利用料、さらにはネットワークにかかる費用など、さまざまなコストがかかります。
もちろん費用を抑えることもできますが、その分、電子カルテの性能が落ちたり使いづらかったりする可能性があるので、注意してください。
停電時に利用不可
3つ目は、停電時に利用できないことです。
電子カルテは主にパソコンで利用するため、停電してしまうと利用が難しくなります。
そのため、予備のタブレットやスマートフォン、さらにはそれらを充電するポータブル充電器を用意しておくのがよいでしょう。
また、タブレットやスマートフォンが用意できない場合や充電がなくなってしまった場合を想定して、カルテ入力、診療予約等を紙でもできるようにしておくのが望ましいといえます。
紙カルテから電子カルテへ移行するには?
ここでは、紙カルテから電子カルテへ移行する方法について解説します。
また、移行する際のポイントについても解説するので、併せて確認しましょう。
紙カルテから電子カルテへ移行する方法
まずは、紙カルテから電子カルテへ移行する方法を解説します。
紙カルテから電子カルテへ移行するには、以下の3つの手順を踏むことになります。
- 電子カルテの選定
- 初期設定
- 試験運用
1つずつ解説します。
電子カルテの選定
まずは、電子カルテの選定をします。
1つの電子カルテだけでなく、できれば3つ以上の電子カルテを比較するとよいでしょう。
それぞれの電子カルテで性能・費用・サポートの充実度などが異なります。
自院が求めていること、必要としていることを判断したうえで、比較・検討してみてください。
初期設定
続いて、電子カルテの初期設定をします。
初期設定はマニュアルを見ながら自ら行うパターンと業者に依頼するパターンがあります。
電子カルテごとに対応が異なるため、サポートの有無、またサポートがある場合も有償/無償を確認しておくとよいでしょう。
特に電子機器の操作に慣れていない方は、業者に手助けしてもらうことで、スタートダッシュでつまずく可能性が少なくなるので、あらかじめサポートを受けられるようにしてください。
試験運用
実際に運用を始める前に、試験運用することを忘れないようにしましょう。
実際に操作しながら、使い方や仕様を確認していきます。
説明を聞いているだけではわからなかった課題が明確になるため、運用開始前に対処法を決めておく必要があるでしょう。
この際、紙カルテを全て排除するのではなく、システムの故障や停電により利用できなくなる場合に備え、紙カルテも残しておくことをおすすめします。
紙カルテから電子カルテへ移行する際のポイント
ここでは、紙カルテから電子カルテへ移行する際のポイントを3つ解説します。
- 操作性を重視する
- コストを明らかにする
- 診療スタイルに適しているかを確認する
それぞれのポイントを理解し、間違った電子カルテ運用をしないようにしましょう。
操作性を重視する
1つ目は、操作性を重視することです。
操作性、すなわち使いやすさを重視することで、運用に手こずる可能性が減るため、スムーズに紙カルテからの移行ができます。
日々の業務がスムーズに行えるので、業務の効率化が図られ、従業員満足度が高まるでしょう。
また、使いにくいことで業務に支障をきたすと、業務の効率が悪くなり、患者満足度が下がってしまうことも十分に考えられます。
そのため、電子カルテを選ぶ場合には、操作性を重視しましょう。
コストを明らかにする
2つ目は、コストを明らかにすることです。
電子カルテを導入するには、初期費用や月額利用料などのコストがかかってしまいます。
これらを明確に把握せず曖昧にしていると、「思わぬ出費」になってしまい、経営に悪影響を与える可能性があります。
悪影響が出てからでは遅いので、事前に確認しておきましょう。
診療スタイルに適しているかを確認する
3つ目は、診療スタイルに適しているかを確認することです。
それぞれの電子カルテにはさまざまな機能が搭載されていますが、その全てを活用することは考えにくいといえます。
不必要な機能がたくさん搭載されていると、かえって操作方法が複雑になったり動作が重くなったりしてしまう可能性が高いのです。
「診療スタイル」「電子カルテを導入する目的」「電子カルテの導入により解決したい課題」を明確にすることで、必要な機能を把握しましょう。
そのうえで、診療スタイルに適した電子カルテを比較したうえで選ぶのが望ましいといえます。
まとめ
今回は、電子カルテについて解説しました。
電子カルテは、医療機関で導入される医療システムの中心的な役割を果たします。
デジタル化の流れを見れば、遅かれ早かれ、ほとんどの医療機関では電子カルテを導入することになることは明らかです。
そのためには、メリット・デメリットを理解したうえで、早くから電子カルテの導入をするとよいでしょう。