近年、医療業界のデジタル化が進み、会計システムや予約システムなどがデジタル化される病院が増えています。
その中でカルテを電子化する流れも広まっており、電子カルテを導入する病院も増えています。
しかし、電子カルテは以前に比べれば普及しているものの、そのメリットに比べれば普及率は低いといえるでしょう。
では、なぜ電子カルテの普及率は低いのでしょうか?
今回の記事では、2022年最新の電子カルテの普及率や電子カルテの普及率が低い理由を解説します。
また、記事の後半では、電子カルテを導入するメリットや導入方法についても解説するので、最後までチェックしてみてください。
この記事の内容
2022年における電子カルテの普及率とは?
まずは、電子カルテの普及率を見ていきましょう。
今回参考にするデータは、厚生労働省のデータ『電子カルテシステム等の普及状況の推移(https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000938782.pdf)』です。
このデータを見ると、電子カルテの導入率は年々高まり、最新のデータである令和2年度において、一般病院の導入率は57.2%、一般診療所の導入率は49.9%となっています。
このことから約半数の病院・診療所が電子カルテを導入していることがわかるでしょう。
しかし、一般病院における病床規模別の導入率を確認すると、病床規模によって、導入率に大きな差があることがわかります。
400床以上の病院では導入率が91.2%となっているのに対し、200〜399床の病院では74.8%、200床未満の病院では48.8%の導入率にとどまっています。
このことから、大規模な病院では電子カルテが広く普及しているのに対し、小規模の病院や診療所ではあまり電子カルテが普及しないといえるでしょう。
電子カルテが普及しない理由とは?
では、なぜ小規模の病院や診療所では電子カルテが普及していないのでしょうか?
理由は主に以下の3つが考えられます。
- 紙カルテのほうが便利
- 導入コストが高い
- コンピュータが苦手
それぞれの理由を以下で詳しく見ていきましょう。
紙カルテのほうが便利
1つ目は、紙カルテのほうが便利なことです。
今まで紙カルテを利用してきた方は、紙カルテに慣れているため、電子カルテよりも便利に使える場合が少なくありません。
新たに電子カルテを導入しても、初期設定をしたり操作方法を覚えたりしなければならず、導入直後から便利に活用するのは難しいといえるでしょう。
そのため、電子カルテよりも紙カルテのほうが便利だと感じ、電子カルテの導入を見送るケースが多くあります。
導入コストが高い
2つ目は、導入コストが高いことです。
電子カルテの導入費はすべて医療機関が負担しなければなりません。
電子カルテを導入しただけでは、金銭的な利益が何もない一方、導入費用や月額利用料が取られてしまう状況になります。
そのため、特に小規模な病院や診療所では、管理に戸惑うことも少ないため、わざわざ損する電子カルテの導入には踏み込みにくい現状があります。
そのため、小規模な病院や診療所で電子カルテを導入するには、費用面以外でのメリットを知ることが大切です。
のちほど導入のメリットを解説するので、併せて確認しましょう。
なお、電子カルテの費用は開発当初からかなり下がっています。
初期費用は300万円ほどで済むことが多く、月額利用料も数万円で済みます。
コンピュータが苦手
3つ目は、コンピュータが苦手なことです。
院長をはじめ、院内スタッフがコンピュータを苦手としていると、操作に戸惑ってしまう可能性があるため、導入に否定的になってしまいます。
たしかに、開発当初の電子カルテは操作方法が難しく、コンピュータが苦手な方には扱いづらい電子カルテが多かったのは事実です。
しかし、ほとんどの電子カルテで操作性が改善して、わかりやすく利用できる電子カルテが増えています。
中には紙カルテとほとんど同じ要領で使える電子カルテも開発されているため、操作性には困らない場合が多いでしょう。
初期設定においてはつまずいてしまう可能性があるため、開発業者にサポートしてもらうことが大切です。
初期設定ができ、使い方のレクチャーを受けたら、あとは簡単に利用できる場合が多いため、ぜひ確認してみてください。
電子カルテを導入するメリットは?
では、電子カルテを導入すると、どんなメリットを享受できるのでしょうか?
ここでは、以下の3つのメリットについて解説します。
- 情報管理がしやすい
- 業務の効率化
- 間違いが減る
それぞれのメリットについて、確認していきましょう。
情報管理がしやすい
1つ目は、情報管理がしやすいことです。
紙カルテと違い、電子カルテでは情報が一元化されています。
また、検索を用いることもできるため、目的の情報を簡単に見つけ出せます。
いちいち探し出したり整理したりする必要がなくなるため、とても便利に使えるでしょう。
業務の効率化
2つ目は、業務の効率化につながることです。
電子カルテの情報が一元化されているだけでなく、連携すれば予約システムや会計システムなどの他のシステムの情報も一元化できます。
そのことから、たった1つのパソコンでほとんどの業務ができるようになり、圧倒的に効率化できます。
業務の効率化ができると、診療に集中できたりスタッフの満足度が向上したりするなど良いこと尽くしだといえるでしょう。
間違いが減る
3つ目は、間違いが減ることです。
紙カルテだと、手書きの文字が読みづらく伝達ミスが起きてしまったり、転記する際に誤って転記をしてしまったりする可能性があります。
しかし、電子カルテにするとこのようなミスがなくなります。
電子カルテに書かれている文字が見にくいことはありませんし、自動で入力されるため誤って転記することもありません。
これにより、従業員はストレスから解放されるため、心身ともに健康な状態で働けます。
電子カルテを導入する方法とは?
電子カルテを導入する方法は、以下の3つの手順を踏むことです。
- 電子カルテの選定
- 初期設定
- 試験運用
1つずつ確認していきましょう。
電子カルテの選定
まず、電子カルテの選定をします。
電子カルテの選定をする際は、3つ以上の電子カルテを比較するのがオススメです。
1つの電子カルテだけをみていると、性能・費用・サポート面などに関して、優れているのかどうかの判断がつきにくくなります。
それぞれ、性能・費用・サポート面などは大きく異なる場合があるため、少なくとも3つ以上の電子カルテを比較し、自院に適した電子カルテを選定しましょう。
初期設定
次に、初期設定をします。
初期設定は、マニュアルを見ながら自分でやらなければいけない場合と、開発業者の担当者に手伝ってもらえる場合があります。
とくに、電子機器の操作が苦手な方は、自分で初期設定をするのは簡単ではなく、手間・時間がかかり、最悪設定できない可能性もあります。
そこで、初期設定の手伝いをしてくれるのかを確認し、手伝いをしてくれる場合は、有償か無償かも確認しておくと良いでしょう。
試験運用
最後に、試験運用をします。
試験運用をする中で、使い方を確認するほか、使用上のネックを見つけることが大切です。
試験運用の段階で、業務が滞ってしまう箇所をあぶり出し対処しておくことで、本運用の際に患者さんに迷惑をかけず、スムーズな運用ができます。
まとめ
今回は、電子カルテの普及率が低い理由を解説しました。
電子カルテの導入に踏み切るには、特に小規模な病院や診療所ではさまざまなハードルを超えなければなりません。
しかし、電子カルテは医療機関のデジタル化を進めるうえで、最も大事なシステムといっても過言ではありません。
電子カルテを導入するメリットを理解したうえで、まずは問い合わせ、聞き込み等から始めてみてください。