「病院情報システムがあると便利って聞いたけど、具体的にどのようなことができるの?」
「病院情報システムについて詳しく知りたい……」
このような疑問・悩みを抱えていませんか?
病院情報システムは、病院の運営をスムーズに行いたいときに活躍してくれるシステムで、多くの医療機関におすすめです。
とくに、病院情報システムを導入することで、医療分野におけるDX化の基盤を構築することが可能で、医療の質の向上や地域包括ケアなどにもつながります。
そこで本記事では、病院情報システムとはどのようなシステムなのかを解説します。
導入する際の注意点やメリットも含めて紹介しているので、病院情報システムの導入を検討している方は参考にしてみてください。
この記事の内容
病院情報システムとは?
病院情報システムは、病院内の診療・事務・経営などに関する情報を統合的に管理・運用するためのITシステムです。
医療機関における基幹システムでもあり、診療の質と安全性の向上や業務の効率化、情報共有の促進などができます。
たとえば、診療現場だと、電子カルテによる情報共有が行いやすく、医師・看護師・薬剤師が同じ患者情報をリアルタイムで確認できます。
また、検査結果や画像、過去の投薬履歴を瞬時に参照できるため、より正確な医療サービスを提供することが可能です。
ほかにも、会計・レセプト管理や病床稼働率・コスト分析などもでき、診療や事務、経営など幅広く活躍します。
病院情報システムの現状と課題
次は、病院情報システムの現状と課題について解説します。
国が目指している姿を含めて紹介しているので、病院情報システムが気になっている方は確認してみてください。
現状・課題
病院情報システムの導入は、昔と比べて増加傾向にあります。
厚生労働省が発表している電子カルテシステムの普及状況に関する調査では、平成20年の段階で一般病院は14.2%・一般診療所で14.7%という割合でした。
一方令和5年の普及状況は、一般病院で65.6%・一般診療所で55.0%と約3倍以上に増えています。
一方で、病院情報システムに関する課題として、コロナ禍以降病院経営は厳しい状況にあるほか、物価や人件費上昇による影響から病院情報システム関連経費が増加し、病院の経営が圧迫している病院も現れています。
また、病院情報システム関連経費の増加だけでなく、医療分野とIT分野のどちらにも精通している人材の確保が難しい点も課題です。
さらに病院情報システムを導入している病院は、主にオンプレミス型システムを採用していますが、院内サーバーのセキュリティ対応や多数の部門システムの外部接続の確認などに関する病院側負担が大きく、セキュリティ面の脆弱性も解消できていない場合があります。
システム関連費やセキュリティ対策などの病院側の負担や、医療分野とIT分野に精通した人材確保などの課題をどのように解決していくか、政府や医療機関で検討されています。
参照:厚生労働省
国が目指している姿
国は、情報セキュリティ対策を向上させながら、病院の情報システム費用の低減や上昇抑制を目指しています。
将来的には各病院が生成AIなどの最新技術やサービスを活用し、医療従事者の負担を軽減しながらより安全で質の高い医療を実現できるように模索されています。
実際に、情報システム費用の低減や上昇抑制は今後の課題となっているため、病院情報システムの導入を検討している場合は、各システムの費用や今後の国の通知などに注目しましょう。
病院情報システムの種類
病院情報システムは、主に8種類あります。
- 電子カルテシステム
- オーダリングシステム
- 画像保存・閲覧システム(PACS)
- レセプトコンピュータシステム
- 医事会計システム
- 看護支援システム
- 検査システム
- 調剤システム
それぞれの種類について解説します。
電子カルテシステム
患者の診療情報を電子化して管理するシステムです。診療内容や既往歴、アレルギー情報・処方歴などを入力・閲覧ができます。
たとえば、医師が診療中に患者の病歴や検査結果を即座に確認することが可能で、より正確な医療サービスを提供できます。
医療の質の向上を図りたいときや、業務の効率化に役立つシステムです。
オーダリングシステム
オーダリングシステムは、医師が行う検査や処方、処置の指示を電子化するシステムです。
具体例を挙げると、血液検査やレントゲン、投薬指示を入力すると、看護師や薬剤師に即座に通知が届く環境を構築できます。検査や投薬などの診療スピードを向上させることが可能です。
また、入力ミスや重複オーダーを自動でチェックできるため、医療ミスの防止にも役立ちます。
画像保存・閲覧システム(PACS)
画像保存・閲覧システムは、X線やCT・MRIなどの医療画像を電子的に保存・閲覧できるシステムです。
フィルムを使用せずに、デジタル画像で保存することができます。
たとえば、放射線医が画像を電子カルテ上で確認を行い、遠隔地からも診断が可能です。
専門医不足の地域でも迅速な診断支援が行えるほか、高解像度で過去画像とも比較でき、診療精度が向上します。
レセプトコンピュータシステム
レセプトコンピュータシステムは、診療報酬請求(レセプト)を自動で作成・管理するシステムです。
診療報酬の自動計算が可能で、返戻や減額のリスク低減が期待できます。
また、診療報酬改定があった際にも、システム更新で迅速に対応できる点も魅力です。
レセプト提出業務の効率化や、事務作業の時間短縮を図れます。
医事会計システム
医事会計システムは、外来・入院の会計処理や保険請求を管理できるシステムです。
たとえば、自動精算機と連携をすることで、窓口業務のスピードアップが図れます。
ほかにも、保険負担額や自己負担金を正確に計算できるため、説明の透明性が向上しやすいです。
また、経営データの分析もできるので、病院経営の改善にも役立ちます。
看護支援システム
看護支援システムは、記録や計画、情報共有などの看護業務の効率化に役立つシステムです。
バイタル記録やケア計画を電子化し、情報の見落としを防止できます。
また、看護師間の情報共有をスムーズにできるので、夜勤・交代時の負担を減らすことが可能です。
ほかにも、点滴や投薬管理をシステムでチェックできるため、人的ミスを削減できます。
検査システム
検査システムは、血液や尿、微生物などの臨床検査の依頼や結果を管理するシステムです。
検査結果を自動で電子カルテに反映することが可能で、医師が即座に状況を把握できます。
また、手作業での転記による人的ミスを防止でき、結果の精度や信頼性の向上が期待できます。
調剤システム
調剤システムは、処方箋に基づく調剤や薬歴管理、在庫管理を支援してくれるシステムです。
具体例を挙げると、重複投与やアレルギーを自動でチェックしてくれるため、医療の安全性向上が期待できます。
ほかにも、薬剤在庫を一元管理が可能で、欠品や過剰在庫を防止できます。
病院情報システムを導入するメリット
病院情報システムを導入するメリットは、主に6つあります。
- 診療報酬請求(レセプト)の効率化・精度向上が期待できる
- 経営データを可視化できる
- ペーパーレスによるコスト削減が図れる
- 医療の質を向上させて医療ミスの防止につながる
- 情報共有のスピードを向上させられる
- スタッフの業務負担の軽減を図れる
それぞれのメリットについて解説します。
診療報酬請求(レセプト)の効率化・精度向上が期待できる
病院情報システムは、診療報酬請求の効率化や精度向上が期待できる点がメリットです。
紙ベースで手書きにしている診療報酬請求を、病院情報システムに入力すると自動で計算されます。
また、薬剤や検査の料金を自動で反映してくれるので、計算ミスや請求漏れを防ぐことが可能です。
結果として、レセプト提出までの時間が短縮され、診療報酬請求にかかっていた事務負担を減らせます。
経営データを可視化できる
病院情報システムを導入すると、経営データを可視化できる点がメリットです。病院情報システムを活用すると、診療データや入院患者数などを分析できます。
分析内容をもとに、病院全体の収益状況や科別の利益率などを把握することが可能です。
具体例を挙げると、「どの診療科が利益を上げているのか」「薬剤費や検査費の割合は適正か」などの細かい部分まで分析できます。
経営判断に役立つ情報をグラフや表にすることが可能で、根拠ある数字をもとに経営方針を検討できます。
ペーパーレスによるコスト削減が図れる
ペーパーレスによるコスト削減が図れる点は、病院情報システムを導入するメリットとして挙げられます。
患者のカルテや検査結果、処方箋などを電子化することで、紙の使用量を大幅に削減できます。
紙カルテの保存や印刷にかかるコスト、書類探しにかかる時間なども削減することが可能です。
また、電子データは複製や共有が容易なので、コピー費用や郵送費用も不要になります。
医療の質を向上させて医療ミスの防止につながる
病院情報システムを導入すると、医療の質を向上させて医療ミスの防止につながります。
病院情報システムは、過去の病歴やアレルギー情報、服薬情報をすぐに確認でき、薬の重複や禁忌薬の投薬を防げます。
また、自動アラート機能によって異常や危険兆候を早期に検知できるため、医療ミスを防止することが可能です。
患者への安全性が高まり、医療の質の向上も期待できます。
情報共有のスピードを向上させられる
情報共有のスピード向上は、病院情報システムを導入するメリットです。
病院情報システムのデータはリアルタイムで共有が行われるため、院内や院外施設との連携をスムーズに行えます。
たとえば、検査結果が出た瞬間に担当医や看護師が確認でき、迅速な治療判断につなげることが可能です。
ほかにも、遠隔地の診療科や分院とも情報共有できるため、診療全体のスピードアップが図れます。
スタッフの業務負担の軽減を図れる
病院情報システムを導入すると、スタッフの業務負担の軽減が図れます。
手書きカルテを作ったり、紙の請求書を作成したりする手間が不要になるので、事務スタッフの作業負担を軽減することが可能です。
加えて、医師や看護師は患者対応や治療に専念でき、無駄な作業時間が減ります。
具体例を挙げると、自動集計やスケジュール管理機能を活用することで、勤務表作成や在庫管理の効率化を図れます。
多くのメリットがあるため、病院情報システムの導入はおすすめです。
病院情報システムを導入する際の注意点
病院情報システムを導入する際の注意点は、主に4つあります。
- 導入時に費用がかかる
- システムの運用とメンテナンスの手間がかかる
- 停電やシステム障害時によるリスクがある
- スタッフへの研修が必須である
それぞれの注意点を解説します。
導入時に費用がかかる
病院情報システムを導入する際の注意点として、導入時に費用がかかる点が挙げられます。
病院情報システムは、本体のソフトウェアやライセンス費、サーバーやネットワーク機器・端末などのさまざまな初期費用が発生します。
また、過去の紙カルテや既存システムのデータを電子化する場合、スキャン作業や形式変換などの作業工数が発生し、データ移行費用にかかる人件費などが必要です。
ほかにも、周辺機器やセキュリティ対策などの構築が必要で、多種多様な費用が発生します。
加えて、費用だけでなく導入に伴う業務停止期間や作業負担を含めて、事前に計画することが大切です。
システムの運用とメンテナンスの手間がかかる
病院情報システムは、システムの運用とメンテナンスの手間がかかる点を考慮しておきましょう。
医療制度改正や診療報酬の変更に合わせて、ソフトウェアを定期的に更新する必要があります。
また、専用端末を定期的にメンテナンスしないと、故障によって病院情報システムが利用できなくなったり、情報漏洩につながったりする可能性があります。
システムの運用やメンテナンスなどの運用マニュアルの整備も重要です。
停電やシステム障害時によるリスクがある
病院情報システムは、電力やネットワークに依存するため、停電や自然災害によってサーバーが停止すると診療に影響が出ます。
たとえば、手術中に停電が起きた際に、必要な患者情報や検査結果が閲覧できなくなり、治療判断や安全性に支障が出る可能性があります。
また、システム障害によってソフトウェアのバグやデータベースの破損リスクがあるため、事前に対策を練っておくことが必要です。
停電やシステム障害などのリスクを想定した業務フローの整備と、定期的な障害訓練を行うとよいでしょう。
大切なデータを守るためにも、定期的なバックアップとクラウド保存を行うのもおすすめです。
スタッフへの研修が必須である
病院情報システムを導入するときは、スタッフへの研修が必須な点を考慮しておきましょう。
高性能なシステムを導入しても、医師や看護師、事務スタッフが扱いきれなければ、宝の持ち腐れ状態になってしまいます。
具体例を挙げると、電子カルテの検査オーダー手順を誤ってしまった場合、検査漏れや薬剤ミスにつながる可能性があります。
そのため、病院情報システムを導入する際には、院内スタッフ全員が扱えるように、定期的にスタッフの研修を行いましょう。
病院情報システムの価格・費用相場
病院情報システムの価格・費用相場は、オンプレミス型であれば200万~500万円程度、クラウド型であれば10万~100万円程度です。
どのようなシステムを導入するかによって費用が大きく変わるため、負担になっている業務や効率化を図りたい業務などを洗い出し、必要なシステムの導入を検討しましょう。
また、初期費用だけでなく、運用費や年間保守費、セキュリティ構築費などのランニングコストも月数万〜10万円程度発生します。
予算と初期費用・運用費用を照らし合わせながら検討してみてください。
病院情報システムに関するよくある質問
病院情報システムに関するよくある疑問について、4つ紹介します。
- 病院情報システムと電子カルテは同じ?
- 病院情報システムにはITスキルが必要?
- 停電やシステム障害のときはどうなる?
- 病院情報システムの導入にはどのくらいの時間がかかる?
それぞれの質問に対して回答していきます。
病院情報システムと電子カルテは同じ?
病院情報システムと電子カルテは、同じではありません。電子カルテは、病院情報システムの一部です。
病院情報システムは、診療・会計・検査・調剤など、病院業務全体を支える基幹システムです。
一方電子カルテは、患者の診療記録管理を担う機能になります。
それぞれの違いを把握し、どのシステムを導入するか検討しましょう。
病院情報システムにはITスキルが必要?
病院情報システムは、基本的な操作スキルがあれば十分です。
一般の医師や看護師、事務スタッフは、マウス操作や入力などのパソコンの基本スキルがあれば病院情報システムを利用できます。
一方で、システム障害や設定変更を行う情報システム担当者は、サーバーやネットワークの知識が求められる場合があります。
そのため、病院情報システムを導入する際には、ITスキルに強い担当者を確保するか、運用マニュアルを整備するのがおすすめです。
停電やシステム障害のときはどうなる?
病院情報システムは電力やインターネット環境に依存するため、一時的に機能が停止する可能性があります。
そのため、万が一に備えて、非常用電源や紙カルテの一時利用マニュアルなどを準備しておくと良いでしょう。
具体例を挙げると、停電が発生したときは、非常用電源でサーバーを稼働させつつ、診療は紙に記録、復旧後にスタッフが電子カルテに転記といった手順がおすすめです。
病院情報システムの導入にはどのくらいの時間がかかる?
病院情報システムは、病院の規模や導入範囲によって異なりますが、数週間から数ヶ月程度で導入可能です。
ただし、複数のシステムを統合する場合は、半年から1年以上かかる場合もあります。
また、病院情報システムを導入した際、問題なく運用できるように、テスト運用を含めて計算するのがおすすめです。
まとめ:病院情報システムを活用して医療ミスの予防や業務の効率化を図ろう!
病院情報システムを活用すると、医療ミスの予防や業務の効率化を図れます。
また、経営データの可視化ができるため、病院経営の改善ポイントを見つけやすく、経営判断のスピードを向上させられます。
多くのメリットがあるため、病院経営の向上を図りたい方は、解決したい課題を明確にしたうえで導入する病院情報システムを検討しましょう。