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オートクレーブとは?仕組みや使い方・滅菌できないものも解説

医療機関で日々用いられる器具は、安心して使用するために、感染源の細菌・ウイルスを殺滅する工程が欠かせません。

この工程は、オートクレーブと呼ばれる滅菌器を用いて行われます。オートクレーブを活用しなければ、医療現場での安全は保たれないため、機器や使い方はしっかりとおさえておくことが大切です。

そこで本記事では、オートクレーブとは何か基礎知識や仕組みについて紹介します。使い方のポイントまで解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

オートクレーブとは高温・高圧蒸気で微生物の滅菌や化学反応を起こす機器

オートクレーブとは、高温で高圧な飽和蒸気で細菌やウイルスを滅菌する機械のこと。高圧蒸気滅菌器とも呼ばれています。

オートクレーブ内を高圧環境にし、加熱で発生する水蒸気(飽和蒸気)で滅菌するため、短期間かつ低温での滅菌が可能。他の滅菌方法よりも効率化を図れます。なお、医療現場では主に、手術器具をはじめとする医療器具の滅菌に用いられます。

オートクレーブで滅菌できる仕組み

では、オートクレーブで滅菌できる仕組みについての紹介です。機械には水で浸せる「スノコ」とヒーターがあります。ヒーターによって水を高温にしますが、沸点は100℃なので細菌やウイルスの種類によっては死滅できません。

そこでオートクレーブでは、水に圧力を加えることで100℃以上の飽和蒸気ができます。これにより、100℃の熱にも強い細菌やウイルスを死滅させることが可能です。

また、温度や圧力などの条件はすでにプログラムされている機種もあれば、自由に変えられる機種もあります。

オートクレーブの所要時間と温度

オートクレーブの温度と滅菌にかかる時間について以下にまとめました。

  • 115℃→30分間
  • 121℃→20分間
  • 126℃→15分間
  • 134℃→10分間

温度によって異なりますが、15〜30分間が目安になるでしょう。

滅菌と殺菌・除菌との違い

次に滅菌と殺菌・除菌との違いについてご紹介します。

  • 滅菌と除菌の違い
  • 滅菌と殺菌の違い

滅菌と除菌の違い

除菌とは物から細菌やウイルスを取り除くことです。洗剤・石けん公正取引協議会によると、物理的、化学的または生物学的作用などにより、物から増える細菌の数を減少させることと定義しています。

よって細菌を減らすことであって完全に殺すわけではありません。一方で滅菌はすべての細菌をなくすことなので、大きな違いがあります。

参照:「除菌」表示基準の概要

滅菌と殺菌の違い

殺菌とは文字通り「菌を殺す」ことです。細菌やウイルスを死滅させていますが、どれくらい殺しているのかが明確に示されていません。

一部を殺しただけでも殺菌といえるので、その他の部分は保証していないです。しかし、滅菌は器具にある細菌やウイルスを全て死滅させるので、こちらも大きな違いがあります。

参照:足立外科胃腸内科医院|滅菌、殺菌、消毒、除菌の違いは?

滅菌は4種類

滅菌方法は、以下の4種類です。

  1. 高圧蒸気滅菌
  2. ガス滅菌
  3. 乾熱滅菌
  4. ろ過滅菌

高圧蒸気滅菌

密閉されている機械の中で、熱に強い菌やウイルスを適切な温度や圧力である飽和水蒸気で滅菌する方法です。他の滅菌方法よりも早く、確実に細菌やウイルスを死滅できます。また滅菌する物も幅広く、医療機関や医薬品の製造現場にも使われています。

参照:ヨシダ製薬|II 滅菌法・消毒法概説

ガス滅菌

ガスの毒性を使って細菌やウイルスを死滅させる方法です。50℃と比較的低い温度で滅菌するので、熱や湿度に弱いプラスチック製やゴム製の器具を処理のために使います。

しかし、毒性があるガスを使うので、人に悪影響を与える恐れもあります。利用する際は十分に注意しましょう。

参照:J-STAGE|エチレンオキサイドガスの毒性とその管理

乾熱滅菌

乾熱空気内で加熱することで、対象物にある細菌やウイルスを滅菌する方法です。大きな機械が必要ないので、場所を取りません。

ガラス製や金属製を対象としており、160〜190℃の温度で使います。細菌によっては時間がかかってしまうので注意です。

参照:ヨシダ製薬|II 滅菌法・消毒法概説

ろ過滅菌

細菌やウイルスをろ過する方法です。主に乾熱滅菌などには使用できない気体や液体に使えます。

フィルターの孔径は0.22μm〜0.45μmあり、細菌やウイルスによって変化します。しかし、フィルターを通して滅菌するので、とても小さい細菌は通過してしまうかもしれません。よって、完全な滅菌方法ではないといえるでしょう。

参照:ヨシダ製薬|II 滅菌法・消毒法概説

オートクレーブで滅菌できないものはある?

オートクレーブで滅菌できないのは、熱に弱いプラスチックや顕微鏡などの光学機器です。オートクレーブは熱い温度と高い圧力で水蒸気を発生させ、滅菌する方法なので熱で変形したり、破損したりすることがあります。

あらかじめ、滅菌が可能なものとそうでないものは、事前に区別しておきましょう。

オートクレーブを使用して滅菌する手順

オートクレーブを使用して滅菌する手順は、以下の5ステップです。

  1. オートクレーブに滅菌用の水を入れる
  2. 滅菌する器具を入れる
  3. ふたを閉めてハンドルをロックする
  4. 排気弁を閉じて滅菌を開始する
  5. 滅菌が完了したら器具を取り出す

オートクレーブに滅菌用の水を入れる

まず、穴が空いている円盤状のスノコが少し浸るくらいの滅菌用の水を入れます。使用する滅菌用の水は精製水や蒸留水、水道水でも可能です。

しかし、水道水の場合は水に含まれている物質が機械に付着するおそれがあります。機種によって異なるので、必ず事前に使い方を確認しましょう。

滅菌する器具を入れる

オートクレーブ内に滅菌する器具を設置します。形状に応じて袋などで包み、滅菌パックを使うことで機械内が汚れにくいです。機械をきれいにすることで長く使えるので必要であれば探してみましょう。

ふたを閉めてハンドルでロックする

密閉性を高めるため、しっかりロックしましょう。ふたが閉まっていないと起動しない機種もあります。

排気弁を閉じて滅菌を開始する

ふたをしっかり閉めたら排気弁を閉じてプログラムを設定する必要があります。排気弁とは機械で起こる圧力を解放するものです。排気弁から圧力が逃げて、うまく滅菌できないので、忘れずに閉めましょう。

滅菌を開始する前には、プログラムを設定する必要があります。自由に設定できる場合は、滅菌するものによって変わりますので、事前に確認しましょう。

滅菌が完了したら器具を取り出す

プログラムが終了すると自動で停止します。滅菌完了後は水蒸気でやけどする恐れがあるため、滅菌した器具を取り出す際は触れる温度になるまで待ちましょう。

機種によっては滅菌した器具を冷やす機能が備わっているので、安全に取り出せます。

オートクレーブで液体を滅菌する3つのポイント

オートクレーブで液体を滅菌するポイントは、以下の3つです。

  1. 容器は閉じずに使用する
  2. オートクレーブ対応の容器を使う
  3. 傷や形が不安定な容器の使用は避ける

容器は閉じずに使用する

容器のふたを閉じた状態でオートクレーブを使うと、容器の中の圧力が上がり、破損してしまうことがあります。破損せずにできたとしても、容器の空気が抜けにくいのでうまく滅菌できません。

オートクレーブ対応の容器を使う

オートクレーブは高温で高圧なので、ゴム性の容器などの熱や圧力に弱い容器が使えません。

傷や形が不安定な容器の使用は避ける

ひびや傷が入っている容器を使うと、容器の中の圧力が上がり、破損する可能性があります。変形していると全体に滅菌できないので容器の形を確認しましょう。

医療現場におけるオートクレーブの選び方6つ

医療現場におけるオートクレーブの選び方は、以下の6つです。

  1. 滅菌したいもので選ぶ
  2. 必要な容量から逆算して選ぶ
  3. 要する滅菌温度と時間で選ぶ
  4. 電源の形状で選ぶ
  5. 設置箇所で選ぶ
  6. 医療現場で必要な機能から選ぶ

滅菌したいもので選ぶ

なにを滅菌したいかを決めてから選ぶのがおすすめです。実験で使う場合は、法規制の対象ではありません。しかし、医療現場で使う場合は医療用として販売許可が義務付けられているなどの法規制があります。

滅菌する形状によっては、オートクレーブ専用の付属品を購入するのもおすすめです。

必要な容量から逆算して選ぶ

オートクレーブは10〜120Lほどの容量があります。一度にどれくらい滅菌したいかを考えた上で選ぶがおすすめです。形状は洗濯機のような機械から卓上型の小さい機械まであります。

要する滅菌温度と時間で選ぶ

機種によって幅広い温度に設定できたり、すでに温度が決まっているものまであります。滅菌したい器具の素材がガラスなどの1種類のみであれば、既存のプログラムを組み込んだオートクレーブで良いですが、ゴム製の器具を滅菌する必要があるときは条件を自由に設定できるオートクレーブをおすすめします。

電源の形状で選ぶ

電源やプラグの形状は機種によって変わります。オートクレーブは高温で高圧を発生させる機械なので、内容量が大きくなれば電気容量も大きいです。

通常のコンセントだと電圧などを超えてしまうことがあります。工事が必要であれば、工事ができるのかなども考慮しましょう。

設置する予定の場所とは全く異なる場所に置くことになるかもしれませんので、入念にチェックすることをおすすめします。

設置箇所で選ぶ

オートクレーブの大きさはもちろんですが、まわりの環境にも配慮しなければなりません。近くに熱に弱いものがあったり、水分によって腐敗してしまうものがある場所には設置しないなど事前に確認しましょう。

医療現場で必要な機能から選ぶ

医療現場でも使われており、医療用には管理医療機器(クラスⅡ)で表されています。片手片足で開閉できるドアがあったり、操作パネルがLED表示になったりする機能があります。さらに安全機能を搭載しているオートクレーブもありますので、医療現場にとっておすすめの機能です。

まとめ:オートクレーブとは何かを理解して器具の衛生管理を徹底しよう

オートクレーブは器具を確実に滅菌したいときに最適です。医療用や研究用などの機種がたくさんあるので、現場にあったオートクレーブを見つけられます。

器具の衛生管理を徹底することで医療現場なら安全性が高いです。研究であれば正確な結果が見込めるので、本記事を参考にしつつ、オートクレーブの導入を検討してみてください。