在宅医療向けの電子カルテは、訪問先での診療情報記録やタブレット入力に対応しており、場所を問わずにカルテを入力できるのが特徴です。
ただ、在宅医療で電子カルテの導入を検討していても、製品数が多く機能や価格も幅広いため「どれがいいのかわからない」と悩まれるでしょう。
そこで本記事では、在宅医療におすすめの電子カルテを紹介しています。在宅医療に特化した電子カルテで業務効率化を図りたい方は、ぜひ参考にしてください。
この記事の内容
在宅医療(訪問診療)向け電子カルテとは?
在宅医療向け電子カルテとは、外来に加えて訪問診療サービスも行う医療機関や、在宅医療を提供するクリニックにとって役立つ機能を有している電子カルテです。
訪問診療や在宅医療を実施するクリニックが電子カルテを導入する際に、通常の製品だと「訪問先で記録ができない」という課題が生じます。
一方、訪問診療や在宅医療向けの電子カルテなら、外出先での診療情報の記録にも対応しており、場所を問わずにいつでもカルテを入力できます。
診療情報の記録以外にも、訪問スケジュール管理や請求システムとの連携など、多彩な機能も搭載しているので、訪問診療や在宅医療の業務を効率的に遂行できます。
在宅医療(訪問診療)の電子カルテで役立つ5つの機能
ここからは、在宅医療や訪問診療に使う電子カルテに搭載されていると役立つ5つの機能について解説します。
- マルチデバイス機能
- 訪問記録の入力機能
- 文書作成の支援機能
- オーダー連携機能
- 請求システムとの連携機能
それぞれの内容について詳しくチェックしていきましょう。
マルチデバイス機能
パソコンだけでなく、タブレットやスマートフォンを使って訪問先でカルテに入力できるマルチデバイス機能であると便利です。
ノートパソコンを持ち歩けば十分と思うかもしれませんが、パソコンだと立ち上げやネットワーク接続に手間がかかるため、どうしても時間のロスが生まれてしまいます。
その点、タブレットやスマートフォンであれば、スムーズな入力が可能です。
訪問記録の入力機能
訪問記録の入力機能があれば、患者と対面しながらスピーディーかつ正確に入力できるのがメリットです。
入力機能とは、定型文を選択して入力したり、過去の文書を利用して新しい書類を作成したりする機能です。
また、自動学習によるランキング表示で、多頻度で実施する治療や処方を即座に選択できる機能もあると、入力時間の短縮につながります。
文書作成の支援機能
在宅医療や訪問診療では、毎月大量に書類を発行する必要があり、忙しい医療従事者たちにとって文書作成は大きな負担となってしまいます。
電子カルテに搭載された文書作成の支援機能を活用すれば、テンプレートや自動入力システムによって簡単に必要な書類を作成できます。
時間の節約になるのはもちろん、文書の正確性も向上し、診療品質の向上が期待できます。
オーダー連携機能
在宅医療や訪問診療に限った話ではありませんが、処置や処方、検体検査などに関するオーダーを電子カルテから指示できると業務効率化が図れます。
さらに、電子カルテに代理依頼承認機能を搭載していれば、代行入力した内容を医師が承認する仕組みによって、より正確で安全なオーダリングを実現できます。
請求システムとの連携機能
電子カルテが請求システムと連携する機能を搭載していれば、医療費の算定や保険請求をワンストップで実行できます。
請求システムと連携している場合、訪問先で電子カルテに入力した内容は自動で請求書類に反映されます。そのため、転記する手間がかからず、大幅な時間短縮が可能です。
在宅医療向け電子カルテの選び方
電子カルテの選択肢は多岐にわたり、どのカルテを選ぶべきか迷うこともあるでしょう。
ここからは、訪問診療・在宅医療向け電子カルテを選ぶ際にチェックしておくべきポイントを紹介します。
- 在宅医療(訪問診療)と外来の割合で選ぶ
- 価格で選ぶ
在宅医療(訪問診療)と外来の割合で選ぶ
在宅診療と外来、どちらも行っている医療機関が電子カルテを選ぶ際には、自院の在宅医療と外来の割合を考慮して選ぶのが重要です。
在宅診療と外来では、電子カルテに求める機能が大きく異なります。そのため、それぞれの特性に合わせて電子カルテを選定しましょう。
在宅医療のみ、または在宅医療の割合が高い医院の場合は、在宅医療に特化した電子カルテを選定するのをおすすめします。
一方、外来比率が在宅医療よりも高い医院なら、外来用の機能を優先して電子カルテを選定しつつ、在宅医療に不可欠な機能もある電子カルテを選ぶとよいでしょう。
価格で選ぶ
電子カルテを導入する際は、無理のない予算を設定したうえで、必要な機能を搭載した製品から選択しましょう。
電子カルテの導入費用は、初期費用と月額費用を合わせた料金体系が基本です。
初期費用の目安は10万円ほどです。ただし、外部機器との連携費用やカスタマイズ度合いによって導入費用は変動します。
月額費用はID発行数によっても異なりますが、およそ数万円程度と見積もっておくとよいでしょう。ユーザー枠を追加する場合は数百円~数千円で補充も可能です。
また、初期費用と月額費用だけでなく、保守・サポート料も併せて考慮しておく必要があります。
在宅医療(訪問診療)向け電子カルテおすすめ10選
ここからは、訪問診療・在宅医療におすすめの電子カルテ10選を紹介します。
- モバカルネット(NTTデバイステクノ株式会社)
- CLIUS(株式会社DONUTS)
- セコムOWEL(セコム医療システム株式会社)
- CLINICSカルテ(株式会社メドレー)
- homis(メディカルインフォマティクス株式会社)
- エムスリーデジカル(エムスリーデジカル株式会社)
- Medicom(ウィーメックス株式会社)
- blanc(JBCC株式会社)
- Henry(株式会社ヘンリー)
- 電子カルテiBow(株式会社eWeLL)
各製品の特徴を比較しながら、自院に適したシステムを見つけてみてください。
モバカルネット(NTTデバイステクノ株式会社)
項目 | 内容 |
---|---|
主な機能 | カルテ入力支援
医事文書作成・管理 グループウェア レセコン連携 スケジュール管理 地図表示 各種情報との共有など |
タイプ | クラウド型 |
料金 | 月額費用:55,000円~
初期費用:220,000円 |
運営会社 | NTTデバイステクノ株式会社 |
公式サイト | https://movacal.net/ |
モバカルネットは、在宅医療専門クリニックと共同開発された、在宅医療に特化したクラウド型電子カルテです。
テンプレートや定型文などカルテ入力支援機能が充実していて、診療の文書作成がスムーズに行えるのが特徴です。
さらに、60種類の医療用文書の自動作成機能やスケジュール管理、訪問先の地図表示など多彩な機能も備えています。
レセコン連携もサポートし、診療報酬明細や請求書などの作成も可能です。
CLIUS(株式会社DONUTS)
項目 | 内容 |
---|---|
主な機能 | 在宅機能
薬用量機能 バックアップ WEB問診 オーダーチェック 経営分析ツール 予約機能 院内機器連携 オーダー自動学習機能 オンライン診療 自動算定 レセコン機能など |
タイプ | クラウド型 |
料金 | 月額費用:12,000円~
初期費用:200,000円 |
運営会社 | 株式会社DONUTS |
公式サイト | https://clius.jp/ |
CLIUS(クリアス)は、予約や診察、院内フローまで一元化できるクラウド型電子カルテです。在宅機能を追加すると、訪問スケジュールの設定や事前カルテの記入などの役立つ機能も利用できます。
300種類以上のシステム連携実績があるほか、独自のアルゴリズムを用いた「AIオーダー推薦機能」を搭載しているのが特徴です。
導入後のトラブル発生時には、パソコンを遠隔接続して画面を確認しながらの遠隔サポートを受けられるのも安心ポイント。個人情報の管理も徹底されており「ISO27001」の認証を受けた厳格な情報管理体制が整っています。
セコムOWEL(セコム医療システム株式会社)
項目 | 内容 |
---|---|
主な機能 | タブレット対応
オンライン診療 予約システム モバイル端末 WEB予約 AIによる自動学習機能 セット作成機能 クイック登録機能など |
タイプ | クラウド型 |
料金 | 要問い合わせ |
運営会社 | セコム医療システム株式会社 |
公式サイト | https://medical.secom.co.jp/it/karte/secomowel/ |
セコムOWELは、在宅医療や無床診療所に特化したクラウド型電子カルテです。
シンプルな画面構成になっており、直感的に扱える簡単な操作性を重視しています。
往診スケジュール作成や医療文書の自動作成機能、介護費用を含む請求書作成など、在宅医療に必要な機能が揃っています。
幅広いOSに対応しているのも特徴で、WindowsやMac、iPad、Androidタブレットなどからアクセス可能です。
CLINICSカルテ(株式会社メドレー)
項目 | 内容 |
---|---|
主な機能 | 経営分析
スケジュール管理 患者登録 受付管理 テンプレート・セット登録 薬剤情報検索 レセプトチェック 会計など |
タイプ | クラウド型 |
料金 | 要問い合わせ |
運営会社 | 株式会社メドレー |
公式サイト | https://clinics-cloud.com/ |
CLINICSカルテは、経営分析機能を標準搭載し、往診時にも活用できるクラウド型電子カルテシステムです。
レセコン一体型のため、外部ソフトでの別途操作は不要。予約から受付、診察、会計業務まで、医療機関と患者がスムーズにつながる仕組みを備えています。
同社シリーズの「CLINICSオンライン診療」をオプション追加すると、電子カルテ上から患者のアプリと連携して利用できるのも魅力のひとつ。SSL暗号化通信や証明書認証による安全なセキュリティを実現しているのも注目ポイントです。
homis(メディカルインフォマティクス株式会社)
項目 | 内容 |
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主な機能 | タブレット対応
訪問スケジュール作成 医療文書作成 オフライン入力機能 AI機能 オーダリングチェック機能 カルテ自動引用機能 タイムライン機能 複数カルテ同時編集機能など |
タイプ | クラウド型 |
料金 | 月額費用:20,000円
初期費用:200,000円 |
運営会社 | メディカルインフォマティクス株式会社 |
公式サイト | https://homis-mics.jp/ |
homisは、在宅医療専門のクリニックの医師チームと共同開発されたクラウド型電子カルテです。
在宅医にとっての使いやすさにこだわり、医師の視点から診療現場で必要な機能を反映しています。
タブレットにも対応し、訪問スケジュールの作成や医療文書作成など、在宅医療に必要な機能を網羅しています。
在宅医療の実務に必要な介護保険の算定も可能で、医療と介護の算定と保険請求がワンストップでスムーズに行えます。
エムスリーデジカル(エムスリーデジカル株式会社)
項目 | 内容 |
---|---|
主な機能 | モバイル端末
タブレット対応 検査結果ビューアー M3 DigiKar モバイル AIによる適応症自動学習 AIによる処置行為自動学習 オンライン診療 予約システムなど |
タイプ | クラウド型 |
料金 | レセコン一体型プラン
初期費用:無料 月額費用:24,800円 ORCA連動型プラン 初期費用:無料 月額費用:11,800円 |
運営会社 | エムスリーデジカル株式会社 |
公式サイト | https://digikar.co.jp/ |
エムスリーデジカルは、導入件数5,000件を超えるクラウド電子カルテです。
最新AIによる文書入力自動学習機能が備わっており、カルテ入力作業の負担を大幅に軽減します。
台数制限がなく、WindowsやMac、iPad、iPhoneでいつでも過去の処置行為や患者情報を確認できます。クラウド上で自動データバックアップを実施しているため、災害時もデータ紛失の心配はありません。
診療報酬改定や新薬追加などに合わせて、データも最新版に自動更新されるため、改修費がかからないのもうれしいポイントです。
Medicom(ウィーメックス株式会社)
項目 | 内容 |
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主な機能 | 文書作成支援
プロブレムリストの管理 ACP・看護師メモ 文書作成 会計チェック オンライン請求 経営分析など |
タイプ | ハイブリッド型 |
料金 | 要問い合わせ |
運営会社 | ウィーメックス株式会社 |
公式サイト | https://www.phchd.com/jp/medicom |
Medicomは、オンプレミスとクラウドの両方で利用可能なハイブリッド型の電子カルテです。
シンプルな操作画面や入力アシスト機能を備えており、スムーズな業務を実現できます。
患者情報の事前表示や保険証確認機能によって、患者の情報を迅速に収集し、スタッフ間での情報共有も強化できます。
機械メンテナンスから訪問設定、運用立ち合いなど、幅広いサポートを提供しているのも魅力です。全国に120箇所もの拠点があるため、迅速に問題解決へ導きます。
セキュリティ面にも優れており、個人情報の漏洩防止や不正アクセス防止、ウイルス感染予防も徹底しています。
blanc(JBCC株式会社)
項目 | 内容 |
---|---|
主な機能 | 文書作成機能
オーダー機能 状況一覧機能 オーダーの期間重複チェック 薬剤投与時の禁忌チェック 予約業務機能など |
タイプ | クラウド型 |
料金 | 要問い合わせ |
運営会社 | JBCC株式会社 |
公式サイト | https://healthcare.jbcc.co.jp/product/blanc.html |
blancは、電子カルテのパイオニアが、30年以上の運用経験を活かして生み出したクラウド電子カルテです。
わかりやすく誰でもすぐに使いこなしやすいUIが特徴で、遠隔診療や訪問医療など、多彩なシチュエーションにも対応可能です。
カルテの情報から診断書や紹介状などの自動作成にも対応しています。
オーダー内容を事前にセット化しておけば、ワンクリックでオーダーも可能。オーダーの重複確認や薬剤投与時の禁忌チェックも柔軟に設定できます。
東日本、西日本それぞれでデータを保管しているため、災害時にデータを守れる点も強みです。
Henry(株式会社ヘンリー)
項目 | 内容 |
---|---|
主な機能 | テンプレート
外部機器連携 将来予約管理 患者メモ・申送り オーダー レセコン 音声入力 手書き入力 経営判断など |
タイプ | クラウド型> |
料金 | 要問い合わせ |
運営会社 | 株式会社ヘンリー |
公式サイト | https://henry.jp/ |
Henryは、中小病院向けに開発されたクラウド型電子カルテです。中小病院における受付から診療、会計までを一挙に運用できます。
パソコンやタブレット端末、スマートフォンなど多彩なデバイスに対応可能。各種連携機能や音声入力、手書き入力なども充実しているため、現場での使い勝手も良好です。
自社開発レセコンと一体型のシステムで処理時間が短く(待ち時間0.5秒)、受付や会計業務をスピーディーに進められます。
iBow(株式会社eWeLL)
項目 | 内容 |
---|---|
主な機能 | 訪問看護計画書の作成
記録書の作成 報告書の作成 利用者情報管理 レセプト作成 帳票・出力 統計・データの作成 チャット機能 経営管理データ出力など |
タイプ | クラウド型 |
料金 | 月額費用:18,000円+1,000円(レセプト利用料)
初期費用:無料 |
運営会社 | 株式会社eWeLL |
公式サイト | https://ewellibow.jp/i-bow/karte/ |
iBowは、全国で54,000人以上に利用されている訪問介護システム「iBowシリーズ」の電子カルテサービスです。
文書作成の効率化に強みを持ち、書類作成に必要な情報をAIが自動的に整理するため、書類作成の時間を大幅に削減します。
各種情報は自動的に各書類から反映されるので転記作業は不要になり、訪問現場での記録入力を簡略化できるのも大きな魅力です。
ユーザー情報の管理機能が充実しているのも注目ポイント。写真やお薬手帳、保険証などを保存でき、詳細なデータを病院外からも確認できます。
在宅医療(訪問診療)のカルテ記載例
ここからは、在宅医療(訪問診療)のカルテ記載例について解説します。
患者の自宅へ訪問して診察する際には、診察記録として必要な事項を書面、または書面に準じるものに記載しなければなりません。
カルテには、診療に参加した医療関係者の氏名や相談内容、患者に行った指導の要点などを記載する必要があります。
カルテを記載する際に気を付けたい主なポイントは、以下となります。
【カルテ記載のポイント】
- 診療に関する事項を遅滞なく記載する
- 患者が見たときに偏見や人格攻撃と感じる書き方を避ける
- ネガティブな感情や表現を避ける
- 医療に関係ない患者のプライバシーや下世話な内容は避ける
- 医療過誤と誤解されかねない自白や他職員の非難、前医の非難などを避ける
- 行政に違法行為と受け取られることとなる記載を避ける
訪問診療にあたって作成しなくてはいけない書類として、「訪問看護記録書Ⅰ」と「訪問看護記録書Ⅱ」があります。それぞれの書類について概要をチェックしていきましょう。
訪問看護記録書Ⅰ
訪問看護記録書Ⅰは、患者の氏名や年齢といった基本情報を記載します。また、主治医や家族の情報、緊急連絡先なども記入します。
【訪問看護記録書Ⅰの主な項目】
- 利用者の氏名、年齢、生年月日、住所、血液型など
- 主たる傷病名、現病歴、既往歴
- 療養状況、介護状況
- 訪問看護の依頼目的
- 緊急時の主治医や家族などの連絡先
- 指定居宅介護支援事業所などの連絡先
- その他関係機関との連絡事項
- 家族構成(氏名、年齢、続柄、職業、特記すべき事項)
- 主な介護者
- 住環境
訪問看護記録書Ⅰは、患者の基本情報をまとめるために初回訪問時に作成するのが基本です。
訪問の度に更新する必要はありませんが、患者の状態や療養状況などが変わった場合にはアップデートしましょう。
訪問看護記録書Ⅱ
訪問看護記録書Ⅱは、訪問年月日や患者の病状、バイタルサイン、提供した治療などについて記入する記録です。
【訪問看護記録書Ⅱの主な項目】
- 利用者氏名
- 看護師等氏名
- 訪問職種
- 訪問年月日、訪問時間
- 利用者の状態(バイタルサイン、体温、脈拍、呼吸、血圧等)
- 実施した看護、リハビリテーションの内容
- その他(上記に当てはまらない事項等を記載)
- 次回の訪問予定日、時間等
訪問看護記録書Ⅱは、訪問した日の患者の状態や、それに対してどのような治療をしたのか、訪問時の内容を記入するため、担当医が訪問する度に毎回作成する必要があります。
まとめ:在宅医療(訪問診療)をサポートする電子カルテを導入しよう
在宅医療や訪問診療をサポートする電子カルテは、業務効率化と正確な医療提供を実現するために不可欠なツールです。
診療スタイルや期待する導入効果などを考慮して、自院に最適な製品を選ぶと、在宅医療や訪問診療の成功につながります。