技術革新により3Dプリンターの精度が高まったことから、歯科用の3Dプリンターも開発されるようになりました。
徐々に導入が広まっており、歯科医療の質の向上に役立っています。
そこで、本記事では歯科用3Dプリンターの用途を解説します。
歯科用3Dプリンターの種類や選び方、さらにはおすすめの歯科用3Dプリンターを5つ紹介するので、興味のある方はぜひ最後までお読みください。
この記事の内容
歯科用3Dプリンターとは?用途を解説
3Dプリンターは読み取ったデータを元に立体の模型を作る機械のことであり、その技術を歯科用に使うのが歯科用3Dプリンターです。
後述する通り、歯科用3Dプリンターには複数の造形方法がありますが、どの方法でもスライスしたデータを1層ずつ積み重ねて立体の模型が作られます。
従来、歯科用3Dプリンターが活躍する場面では、多くの日数や工程、コストを必要とする場合が多くありました。
3Dプリンターを利用することで、日数を短縮しコストも抑えることができ、治療精度の向上にも役立ちます。
そんな歯科用3Dプリンターは、大きく分けて2つの用途に使われます。
- 歯列模型
- 矯正歯科・インプラント治療
それぞれ歯科用3Dプリンターをどのように利用するのかを以下で解説します。
歯列模型
1つ目の用途は歯列模型です。
歯科では歯列模型を使用することが多くありますが、歯列模型を保管しておくには多くのスペースが必要です。
しかし、3Dプリンターで速やかに歯列模型が作れれば、保管スペースを削減でき、別の目的に活用しやすくなります。
治療計画を立てるときやインフォームドコンセントの過程で、歯列模型を患者に見せ、確認を取る際にも活用できます。
矯正歯科・インプラント治療
2つ目の用途は矯正歯科・インプラント治療などの実際の治療です。
矯正歯科ではマウスピース、インプラント治療では手術用ガイドなどの医療を手助けするツールを速やかに作成できます。
また、歯型を取るためのカスタムトレーを制作することも可能であるため、様々な場面で3Dプリンターが活用できることがおわかりいただけるでしょう。
歯科用3Dプリンターの種類(造形方式)は?
歯科用3Dプリンターの造形方式は、主に以下の3つです。
- 光造形方式
- インクジェット方式
- FDM方式
それぞれどのような方式かを見ていきましょう。
光造形方式
1つ目は、主流の方法である光造形方式です。
光造形方式は、レジン(液体のUV硬化性樹脂)に光を当て、硬化させることで1層ずつ積み上げる手法です。
なお、光造形方式には、大きく分けてDLP方式・SLA方式の2種類があります。
DLP方式はプロジェクターを使い、面で積層するため、スピードが速く精度が高いことが特徴です。
一方、SLA方式はスピードはDLP方式よりも遅いものの積層面積が広くなる点が特徴です。
インクジェット方式
2つ目は、インクジェット方式です。
インクジェット方式は、粉末状の材料を噴射することで、点で積み上げていく方法です。
スピードは速くありませんが、広い面積を積層できる点がメリットだと言えます。
FDM方式
3つ目は、FDM方式です。
インクジェット方式と同じく、点で積み上げていく方法であるため、スピードは速くありません。
ただし、3Dプリンター自体の価格や材料の価格が安い傾向にあるため、費用を抑えて利用したい方におすすめです。
歯科用3Dプリンターの選び方
歯科用3Dプリンターを導入する際、以下の3点を意識しましょう。
- 造形方式を知る
- 必要な精度を見極める
- 使用したい材料に3Dプリンターが対応しているか確認する
1つずつ解説します。
造形方式を知る
1つ目は造形方式を知ることです。
前述の通り、大きく分けて光造形方式、インクジェット方式、FDM方式の3種類があります。
それぞれの造形方式の特徴を知り、利用目的に応じて、3Dプリンターはどの造形方式が良いのかを考えましょう。
必要な精度を見極める
2つ目は必要な精度を見極めることです。
どの造形方式を搭載しているのかにより、3Dプリンターの精度は大きく異なります。
利用目的を明確にし、どの程度の精度が必要かを見極めたうえで、3Dプリンターを選ぶのがおすすめです。
使用したい材料に3Dプリンターが対応しているか確認する
3つ目は使用したい材料に3Dプリンターが対応しているか確認することです。
3Dプリンターごとに対応している材料の種類が決まっているため、使用したい材料が使えない可能性が考えられます。
購入してから発覚することのないよう、あらかじめ対応の可否を確認しておきましょう。
歯科用3Dプリンターのおすすめ5選
ここでは、歯科用3Dプリンターのおすすめを5つ紹介します。
- Focus 6K
- Form 3B/Form 3LB
- D20+
- Slash2
- cara Print 4.0
それぞれの特徴を確認しましょう。
Focus 6K
項目 | 特徴 |
---|---|
造形方式 | 光造形方式(LCD) |
対応用途 | 修復治療 サージカルガイド ワックスパターン リテーナー パーシャルフレームワーク 歯列矯正 |
価格 | 要問い合わせ |
保証 | 1年 |
付属品 | 金属ヘラ、プラスチックヘラ、フィルター、ゴム手袋、USBメモリ、レンチセット |
販売会社 | APPLE TREE株式会社 |
販売サイト | https://flashforge.jp/product/focus6k/ |
Focus 6Kは、ムラのない出力が魅力的な3Dプリンターです。
軽くて丈夫であり、動作が安定しているため、高い精度で積層できます。
さまざまな機能を搭載することにより、従来の3Dプリンターよりも工程が簡素化された点も特徴の1つです。
Form 3B/Form 3LB
項目 | 特徴 |
---|---|
造形方式 | 光造形方式(LFS) |
対応用途 | 歯科技工所 歯科診療 矯正 |
価格 | 税込 1,020,800円 |
保証 | 2年 |
付属品 | 要問い合わせ |
販売会社 | 株式会社アイ・メーカー |
販売サイト | https://i-maker.jp/blog/form-3b-13040.html |
Form 3B/Form 3LBは、正確な積層が得意な3Dプリンターです。
光造形方式の新しいタイプである「LFS方式」は、従来の方式よりもタンクの底面と造形物を引き剥がす力が弱くなっています。
無駄な力をかけずとも引き剥がせるようになったため、痕が残りにくくなるなど、複数の点で改善しています。
歪みが軽減されたりメンテナンスがしやすくなったりしているため、かなり使い勝手の良い3Dプリンターだと言えるでしょう。
D20+
項目 | 特徴 |
---|---|
造形方式 | 光造形方式(DLP) |
対応用途 | デンチャーベース クラウン 矯正モデル スプリント サージカルガイド テンポラリークラウン インプラントモデル |
価格 | 要問い合わせ |
保証 | 要問い合わせ |
付属品 | 要問い合わせ |
販売会社 | コアフロント株式会社 |
販売サイト | https://www.corefront.com/products/rapidshape-d-series/#main-lineup |
D20+は、光造形方式(DLP)を採用しているほか、特許技術であるForce Feedback System(FFS)も採用しています。
これにより、精密かつ速いスピードで造形物を仕上げることが可能です。
また、D20+は、コアフロント株式会社が販売している他の製品と同程度の性能でありながらコンパクトな設計になっているため、スペースを取りすぎない点も利点の1つです。
Slash2
項目 | 特徴 |
---|---|
造形方式 | 光造形方式(LCD-SLA) |
対応用途 | 要問い合わせ |
価格 | 1,050,000円(税込) |
保証 | 6ヶ月(2年間あんしん保証パックの加入で2年) |
付属品 | 日本語マニュアル、ACアダプター(PSE認証取得済み)、スクレイパー、修理用工具、造形物後処理キット |
販売会社 | 株式会社 マシンツール中央 |
販売サイト | https://www.xn--5ck4bxctb.com/slash2 |
Slash2は、光造形方式(LCD-SLA)を採用しています。
LCD方式は近年新しく登場した造形方式であり、LCDパネル(液晶ディスプレイ)を土台として用います。
従来の光造形方式に比べて、かなり安価で製造できるため、価格を抑えて利用したい方はLCD方式についての知識を持っておくと良いでしょう。
また、Slash2は、デュアル水冷システムを導入し、従来の2倍の速度で冷却できる点も特徴として挙げられます。
cara Print 4.0
項目 | 特徴 |
---|---|
造形方式 | 光造形方式(DLP) |
対応用途 | クラウン&ブリッジ パーシャルフレーム デンチャー トレー 模型 スプリント マウスガード サージカルガイド |
価格 | 要問い合わせ |
保証 | 要問い合わせ ※耐用期間:5年(保守点検必要) |
付属品 | 金属ヘラ、プラスチックヘラ、フィルター、ゴム手袋、USBメモリ、レンチセット |
販売会社 | クルツァージャパン株式会社 |
販売サイト | https://kulzer.co.jp/ja/ja/products/カーラ-プリント4-0-プロ.html |
cara Print 4.0は、クルツァージャパン株式会社により販売されている3Dプリンターであり、光造形方式(DLP)を採用しています。
従来の製品と比べて、46%も造形面積を確保できるため、生産性の向上につながります。
また、「アキュレイトフィットシステム」(AFS)という技術を用いることで、滑らかな表面に仕上げることが可能です。
まとめ
今回は、歯科用3Dプリンターについて解説しました。
造形方式のうち、光造形方式は次々と新しい技術が生まれており、進化のスピードが目まぐるしくなっています。
そのため、歯科用3Dプリンターを導入する際はなるべく新しい製品を選ぶようにすると良いでしょう。
今回紹介した5つの3Dプリンターをはじめ、様々な歯科用3Dプリンターが販売されているので、用途に合う3Dプリンターを探してみてください。