クリニックを居抜き物件で開業しようか迷っている方はいらっしゃいませんか?居抜き物件での開業は、初期費用を抑えられたり準備を短縮できたりといくつかのメリットがあります。
本記事では、居抜き物件でクリニックを開業するメリット・デメリットや物件を選ぶ際のポイント、費用相場について解説していきます。
クリニックの開業を検討している場合は、ぜひ参考にしてみてください。
この記事の内容
居抜き物件とは
居抜き物件とは、前の事業者が利用していた設備や内装を大きく変えず、そのまま利用できる状態で賃貸や売買される物件のことです。
クリニックの居抜き物件では、診療室や待合室の内装、医療機器、エアコンなどの設備を引き継いで使用できる可能性があります。そのため、物件を引き継いだ後に大がかりな工事を行う必要がない点が魅力です。
一般的な物件では、内装や設備が取り払われたスケルトン状態なので、開業前に内装工事等が必須となります。こういった事情を踏まえると、居抜き物件の方が開業しやすいといえるでしょう。
継承物件との違い
居抜き物件と混同されやすいものに「継承物件」があります。継承物件とは、内装や設備だけでなく、経営権や患者、取引先などクリニックそのものを継承できる物件のことです。
居抜き物件の場合、物理的な設備や内装だけを引き継ぐので、開業後は新設のクリニックとして一から運営していきます。対して継承物件では、前のクリニックの患者と取引先を引き継いでスタートできるため、開業直後から安定した運営が可能です。
ただ、前のクリニックの評判が悪いとかえって集患が難しくなることもあるので、継承物件の選定には十分注意する必要があります。
クリニックを居抜き物件で開業するメリット
クリニックを居抜き物件で開業するメリットは、主に以下の4つです。
- 初期費用を抑えられる
- 開業までに必要な準備期間を短縮できる
- 以前のクリニックの患者を取り込みやすい
- 保健所の審査に通りやすい
初期費用を抑えられる
居抜き物件で開業する場合、元々の医療設備や内装をそのまま利用できるケースが多いため、一から揃える必要がありません。医療機器や医療施設用の家具は決して安いものではないため、これらの費用が浮くだけでもかなりの負担軽減になるでしょう。
また、初期費用が抑えられれば、その分クリニックの運転資金に回せるので、開業直後の不安定な時期にも対応しやすいようになります。
開業までに必要な準備期間を短縮できる
居抜き物件はある程度設備が整っており、大がかりな内装工事も必要ないため、開業までの準備期間を短縮できます。
クリニックを開業するまでには、書類作成や行政手続き、スタッフの採用など様々な準備に時間と手間がかかります。多くの医師は働きながらこれらの準備をすることになるので、負担の大きさは計り知れません。物件の内装工事や設備の手配などを短縮できれば、開業準備に余裕が生まれるでしょう。
以前のクリニックの患者を取り込みやすい
以前同じ場所で営業していたクリニックの認知度を活かして、患者を取り込みやすいのもメリットです。例えば、前のクリニックの認知度が高ければ、前のクリニック目当てで訪れた患者に立ち寄ってもらいやすくなります。前のクリニックの患者を取り込めれば、集患の手間を省けるので、何かと忙しくなりがちな開業直後に余裕が生まれます。
また、前のクリニックの閉院を理由に転院していた患者が戻ってくる場合もあり、この恩恵は経営を安定させる一助となるでしょう。
保健所の審査に通りやすい
居抜き物件は、保健所の審査に通りやすいという利点もあります。
クリニックを開業するためには「開設許可申請」を保健所に提出し、審査に通らなければなりません。この時の審査では立ち入り検査が行われ、内装や設備、労働環境、管理体制などが細かく調査されます。
通常の物件の場合、一から内装や設備を整えているので準備が行き届いていないこともあり、細かい部分を指摘される可能性が高くなります。
一方で居抜き物件では、すでに一度審査を通ったことのある内装や設備が最初から準備されています。そのため、保健所から指摘される箇所が少なく、通常の物件より審査に通りやすいでしょう。
クリニックを居抜き物件で開業するデメリット
クリニックを居抜き物件で開業するデメリットは、主に以下の3つです。
- 設備や内装を大きく変えられない
- 建物や設備の修繕費が高額になることがある
- 以前のクリニックのイメージが引き継がれやすい
設備や内装を大きく変えられない
居抜き物件は、以前のテナントが利用していた内装や設備がそのまま残されています。そのため、あとから内装や設備を大きく変更することは難しくなります。
クリニックの場合は、診察室や医療機器の設置など医療機関特有の内装や設備が必要で、既存の状態では使い勝手が悪いこともあるでしょう。万が一、そういった状況に陥った場合、改装することもできますが、相応の費用がかかります。
改装に費用をかけると、居抜き物件のメリットが半減してしまうので、まずはクリニックに適した居抜き物件を選ぶことが重要です。
建物や設備の修繕費が高額になることがある
居抜き物件では、建物自体や設備が老朽化していて、修繕費が高額になることがあります。特に前のテナントが長期間利用していた場合、エアコンや給排水設備、電気設備などが劣化している場合があります。
修繕や買い換えをするとなると、時間も費用もかかり開業までの計画に影響を及ぼしかねないので、居抜き物件の設備老朽化には十分注意しましょう。
前のクリニックの評判が悪いと集患しにくい場合がある
以前のクリニックが高い評価を得ていた場合、患者を取り込みやすいメリットがありますが、その逆もしかりです。もし評判の悪いクリニックだった場合、集患しにくくなることがあります。
例えば、前のクリニックの評判が悪く、地域の患者が評判の良い他のクリニックに流れてしまっている場合です。この場合、患者はすでに評判の良いクリニックを見つけているため、わざわざ新しいクリニックに通う必要がありません。このように患者の足が遠のいており、行きつけのクリニックを見つけてしまっていると、患者を取り戻すのは困難です。
特に前のクリニックの評判が悪く、なおかつクリニックの競争率が高い地域だと、新規の患者を集めるのは容易ではないでしょう。
居抜き物件でクリニックを開業する費用相場
居抜き物件の場合、前のテナントの内装や設備をそのまま引き継ぐことができるため、比較的費用を抑えられます。一般的には、一坪あたりの工事費が10〜数十万円程度かかり、物件全体を整える費用は300〜1000万円弱とされています。
ただ、物件の広ければその分工事費がかさむので、あくまでも目安として参考にしてみてください。
また、建物自体や設備が劣化していて、修繕あるいは買い替えが必要になった場合にも、費用が高額化してしまいます。そのため、事前に物件の状態をよく確認し、修繕や買い替えにかかる費用は把握しておきましょう。
クリニック開業のためには、工事費の他にも以下のようなお金がかかります。
- 医療機器の導入費用
- 保険・行政手続き費用
- 宣伝費用
- 人件費
- 備品購入費 など
前のテナントがクリニックでなかった場合は医療機器の購入が必須になりますし、集患やスタッフの採用にも数十万単位の費用が必要です。これらの費用を合算すると、開業にかかる費用相場は安くても数百万円、規模の大きいクリニックだと1000〜1500万円かかります。
居抜き物件での開業は、初期費用が抑えられるメリットがありますが、それでも開業までの費用は安いものではありません。大事な自己資金や融資金を使うわけですから、失敗のリスクを最小限にするためにも、より細かく計画を立てて準備を進めましょう。
クリニック開業のために居抜き物件を選ぶ際のポイント
クリニック開業のために居抜き物件を選ぶ際のポイントは、主に以下の3つです。
- 立地や周辺の環境をよく調べる
- 建物や設備の状態を確認する
- 以前のクリニックの評価を調べる
立地や周辺の環境をよく調べる
クリニックの成功を左右する要素の1つが、立地や周辺の環境です。駅やバス停までの距離、駐車場の有無など、患者が通いやすい立地かどうかをよく調べましょう。
また、競合クリニックの数や商業施設の有無なども重要です。例えば、競合が多い地域で開業してしまうと、競争が激しく集患が難しくなります。逆に商店街やスーパーの近くで開業できれば、患者が生活の中で訪れやすくなるでしょう。
建物や設備の状態を確認する
建物や設備が劣化していると、修繕費や買い替え費がかかってしまうので、事前に状態をよく確認しておきましょう。例として、以下のような項目について確認してみてください。
- 壁に穴が空いていないか
- 医療機器に故障がないか
- エアコンや家具、給排水設備に故障がないか
- 医療機器はどれくらいの期間使い込まれているか など
もし、修理や買い替えが必要だと判断した場合は、必要な費用を見積もりすることが重要です。具体的な費用を知った上で、居抜き物件を利用するメリットがあるのかを再度検討してみてください。
以前のクリニックの評価を調べる
以前のクリニックの評価は、良いものも悪いものも引き継がれる可能性があります。そのため、あらかじめ前のクリニックの評価は調べておきましょう。
評判が良ければ、前のクリニックの患者が来てくれて、集患の時間と手間が省けるといった恩恵が期待できます。ただ、もし評判が悪かった場合でも、それだけで決めずに立地や設備などの条件も踏まえて、物件全体を見て検討してみてください。
まとめ:居抜き物件でクリニックを開業してみよう
本記事では、ここまで居抜き物件でクリニックを開業するメリット・デメリットや物件を選ぶ際のポイント、費用相場について解説してきました。
居抜き物件では、初期費用を抑えて比較的簡単にクリニックを開業できます。その反面、内装や設備の自由度が低く、前のクリニックのイメージが引き継がれやすいといったデメリットもあります。そのため、事前に物件の状態や前のクリニックについて十分に調査しておくことが重要です。
クリニックの開業場所に居抜き物件を検討している場合は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。