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小宮山 彌太郎 院長

YATARO KOMIYAMA

インプラントを日本に持ち帰って三十数年。
今も正しい知識を伝えることの困難と戦う

東京歯科大学卒業。1980〜1983年までスウェーデン・イェーテボリ大学に留学、インプラントを学ぶ。東京歯科大学に1990年まで勤務後、赤坂に「ブローネマルク・オッセオインテグレイション・センター」を開院。2006年、現在の半蔵門に移転。東京歯科大学で臨床教授、昭和大学歯学部で客員教授を務める。

小宮山 彌太郎 院長

小宮山 彌太郎 院長

ブローネマルク・オッセオインテグレイション・センター

千代田区/一番町/半蔵門駅

  • ●歯科

インプラントの祖、Dr.ブローネマルクの意志を継ぐクリニックを日本で開院

小宮山 彌太郎 院長

1980年から83年までスウェーデンに留学してインプラント術式を習得し、日本にこの方法を紹介しました。帰国当初は大学で治療を進めていましたが、その環境では正しい普及に限界を感じ、1990年に適切なインプラント治療の実施と正しい概念を歯科医療従事者に伝える教育の場として当院を設立しました。個室のユニットが4部屋、手術室、回復室、技工室、その他インプラント講習会などに用いる会議室があり、オートクレーブによる高度な滅菌装置や歯科用CTなども備えてまずまず充実した環境でしょう。当初の開業は赤坂でしたが、その後、半蔵門に移転しました。当院は地域密着型ではなく、全国から患者さんがお見えですので都心が便利と考えますが、診療所の窓の外には英国大使館の敷地が拡がる静かな空間で、ここで仕事ができることにすごく幸せを感じます。クリニック内は明るい色の木材でまとめました。個人的に華美なものや重厚なものは好みでなく、医療の現場として素朴で明るさのある院内にしたかったのです。あちこちにスウェーデンの木馬、ダーラナホースがあるのは、当院がこの国と深いつながりがあるからです。
受付に入ると、この国、スウェーデンのペル・イングヴァール・ブローネマルク教授の大きな写真があります。彼は今日のインプラント療法のすべてを確立したパイオニアで、技術だけでなく医療従事者としての心構え、将来への展望の持ち方なども直々に教えていただき、日々様々な場所で彼の言葉を思い出します。「患者さんには好ましい治療を、医療従事者には適切な教育ができる施設を作りなさい。君が望むならば、私の名前を冠しても構わない。」との言葉から当施設に彼の名前を冠しました。
当院はほとんど宣伝をしていないこともあり、患者さんのほとんどが開業医や大学病院からの紹介ですが、紹介状がなくても構いません。患者さんへの不適切な誘導は好みませんし、正しい情報を提供するのも私どもの責務と考えていますので、セカンドあるいはサードオピニオンを得る場として大いにご利用ください。

今の日本のインプラント状況を思うと、非行に走った息子を思う親の気持ちに

小宮山 彌太郎 院長

私は日本にインプラントを最初に紹介した者ですが、昨今のインプラントに関連した問題点に心を痛めています。フィリピンの歌手、フレディー・アギラの歌に、非行に走った息子を嘆く父親の歌がありますが、まさにそのような心境です(笑)。本来、長期間にわたり良好な成績を残せるインプラント療法が、安易な適用により悪者と捉えられる現状を憂いています。
インプラント療法は科学であると思います。すなわち、先達の創意工夫、試行錯誤により築き上げられてきた知識、技術を後進の人間は踏襲することから始め、そこで得たものを次の世代に引き継ぐべきであると思うのですが、ごく一部の歯科医師は、基礎をないがしろにしする傾向にあり、ご自身の大切な患者さんを落胆させています。医療従事者にはそれなりのモラルが求められますが、経営観念が先行して不適切な誘導もみられます。このような結果、いわゆるマスメディアによるインプラントバッシングと呼ばれる要因になっているのかもしれません。私はこれをネガティブなこととは捉えていません。この様な報道で患者さんも用心し、“歯科に関して賢くなって下さる”でしょうし、それに気付いて自重する医療従事者も増えていき、歯科界がより評価される契機になると考えています。
インプラントの技術はすでに完成し、どうやったらうまくいくかという点はもう議論尽くされている。今はその次の段階、問題が出て来る時期です。十年くらい前から日本だけでなく世界中から様々な問題が報告されています。インプラントをより安全な、確実な療法とするために、これらの問題をひとつひとつ解決していかなければなりません。
そのためにも今はとに歯科医師は、かく、歯科医師も患者さんも正しい知識を持つことが課題です。当院は開院以来、長いことホームページを持ちませんでしたが、ある患者さんの遺言「正しい知識を伝えるホームページを作ってください。」がきっかけとなり、数年前に作成しました。広告目的ではなくインプラントの基本の仕組みや考えなどを記したものです。これも患者さんの正しい情報収集のひとつのよすがになれば、と思っています。

患者が亡くなるか、医師が仕事ができなくなるか。そのどちらかまで治療は続く

小宮山 彌太郎 院長

インプラントは生体組織に直接埋め込まれる工業製品ですので、組織から異物と認知されない材料に加えて、その術式は一般的な歯科治療の単なる延長線上に在るものではなく、衛生環境や丁寧な組織の取り扱いなど、より慎重な姿勢で臨む必要があります。
元来、生体内に存在しない物質、たとえばトゲが刺さると次第にそれが排出されます。それが生体の仕組です。いかに組織と馴染むチタンであっても、条件次第で長持ちしないこともあります。車を例にとっても、定期点検や車検が義務付けられています。まして、生体組織は時間とともに変化しますので、当初は調子がよくても過信してはいけません。それをいかに丁寧にメインテナンスするかにより、成績が異なります。一般的な歯科治療についても共通したことですが、生体の仕組を理解しないまま目先のインプラントの埋入技術だけを重視する歯科医師がいないとも限りません。どれだけ丁寧に術後のメインテナンスをしてくれるかは、いい医院選びのひとつの基準となるでしょう。ブローネマルク先生は「患者さんが亡くなるか、君が仕事ができなくなるか。そのどちらかが来るまで、つきあいは続くんです」とおっしゃっていました。それだけ治療に責任を持たなければならないということです。私が治療した患者さんで追跡可能な最長の方は34年が経過し、90歳を迎えられた今日でも快適に過ごされています。
従来の常識とは違う、ということは医師も患者さんも知らなければならないことです。滅菌方法ひとつとっても、今までの歯科治療で良しとされていたことは通用しないのが本当なのです。「でも今までこれでやってきたから」という考えは捨てなくてはいけません。これは患者さんも同様で、例えばインプラント術後に違和感を持たれても、“ブリッジ装着直後は変な感じがしたけれど、すぐに慣れたし”と放置してしまう、このような先入観は捨てて下さい。しばらくしたらブリッジがなじんだ、それは根にある歯根膜が補正してくれたからです。しかしながら、インプラント周囲には歯根膜は存在しません。インプラントと一般的な歯科治療は別物、と理解して下さい。

簡単に、手軽にできるインプラントはない、と思っていい

インプラント療法には、治療中だけではなく治療後にも細心の注意が求められます。生体組織に手を加えるのだから、工業製品のようにいつも同じに、完全に、というわけにはいかない。決して100%の成功率は謳えません。でも患者側としたら、もし“短時間で、安く、簡単に”と言われたら、そちらに目を向けることは当然でしょう。医師としても、“本当は治るためには一定の時間をおくべきだが、患者さんにはすぐに嚙めるようになりますと来週までにと約束してしまったし…”などの理由で手順を簡略化しがちなのでしょう。でもそれは違うんだ、手がかかって当たり前なんだという意識に変わっていただきたいと思います。近年のインプラント表面には粗面構造が与えられているために、以前よりもオッセオインテグレーション(チタンと骨の接着)の獲得は容易になってきましたが、その代償としてバクテリアが繁殖しやすくなります。そもそもインプラントというのは、本来はものすごくストライクゾーンが狭いものなのです。高度な技術と細心の気配り、そして長い時間をかけて初めて、ようやく成り立つもの。「簡単」はないと認識してください。
ブローネマルク教授は技術だけでなく、姿勢をはじめとする人間的に優れた方でした。1965年の最初の臨床応用から15年間は外部に公開することなく、主として研究室とそのOBだけで治験を繰り返し、高度な安全性を確認してから、ようやく世界に向けて概念、技術を紹介しました。医療に限らず日進月歩で新技術が登場しては消えていく現代ですが、インプラントはこれと真逆を行くくらいでいいと思っています。現在、インプラントは200種以上あると言われていますが、研究対象となっているシステムは多くはありません。長年かけてデータを積み上げ、検証し、結果を追跡する。その後、ようやく臨床に移る…このような慎重で誠実な姿勢は医療の全ての場面で必要でしょう。

これから受診される患者さんへ

どれだけ面倒で大変でも、インプラントがうまくいき、噛める喜びが戻ってくるとそれだけの価値はあった、と思う患者さんが多いのも事実です。「あのとき受けて本当によかった」と術後二十年、三十年してお手紙をいただくこともあり、この仕事に従事している者にとっての喜びです。我々がしていることは、感情を持つ生体組織に手を加えますが、歯を治療するということよりも、患者さんの生活の質の向上の手助けをしているのです。人体は日々状態が変わるものであり、なおかつそこに感情を備えています。気持ちいい、うれしい、楽しい、もしくはがっかりした、つらい、痛い…等々。治療がうまくいけばとびきりの良い感情に出会える、これがなによりもの喜びです。反対にマイナスの感情が出てきたら、それを取り除くために全力で努力する。これもこの仕事の醍醐味です。
簡単ではない、でもそれらを含めて意味があるもの、インプラントはそういうものです。
とはいえ、この膨大な手間や身体への侵襲を考えれば、決して誰もがやるべきものというわけではない。当院には他施設からの紹介で多くの患者さんが見えますが、一般的な歯科治療に治療法の方がその患者さんには適していると判断した場合は、治療せずにお返しします。
みなさんがインプラントを考えられたときは、ぜひじっくり時間をかけて判断してください。たいていの場合、インプラントは一分一秒を争うものではありません。セカンドでもサードでも納得するまであちこちで意見を聞いたり、自分で情報を集めたりして熟慮することが大切で、決断を急がせるような医院は要注意でしょう。数か所の医院で意見を聞く場合、最初に撮ったレントゲンやCTの写真を借りて、次へ持っていくことをおすすめします。多少でも被爆するわけですから、このような撮影は少ないにこしたことはありません。良心的な医師なら快く貸し出して下さるはずです。
当院では、外科的処置前の医科の主治医との対診を重視しています。対診とは、歯科以外の病気を持つ患者さんの担当医に、その病気に関する情報を提供していただくことで、この患者さんは高血圧、心臓疾患をお持ちとか、骨粗鬆症だとか、口腔以外の症状について担当医に問い合わせ、指示を仰ぎます。これを知らないと手術の最中、もしくは前後で重篤な状態になる可能性があるので必須なのですが、以前「こんなに丁寧な対診を経験したことはありません。感動いたしました。」とのお手紙をある医師からいただいたことがあります。他院ではあまり行われていないのかな?と思いました。これも気になっていることのひとつです。みなさんも手術前はきちんと対診していただいてください。
いろいろと注文をつけましたが、インプラントが素晴らしい療法であることは間違いありません。この技術が最高の形でみなさんの生活に役立つことを日々願っています。


※上記記事は2017年11月に取材したものです。
時間の経過による変化があることをご了承ください。

小宮山 彌太郎 院長 MEMO

  • 出身地:長野県
  • 趣味:写真撮影。旅行。バイクに乗ること。1200ccと1000cc、それに50ccのバイクを所有。
  • 好きな土地:スウェーデン。けばけばしくなくて、自然が美しい。
  • 好きな音楽:クラシック、ケルト音楽、北欧音楽、最近はジャズも好き。友人のジャズ・ピアニストの小曽根 真さんが、クラシックも手がけられたことも一因。

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穏やかでやさしく話しやすい先生

穏やかでやさしく
話しやすい
エネルギッシュで
明るく話しやすい

先生を取材したスタッフまたはライターの回答より

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話しやすい
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