西村 知香 院長
CHIKA NISHIMURA
全国でも希少な認知症に特化した個人クリニック
患者と介護者、両方のケアで生活改善を実現
横浜市立大学医学部卒業、同大学神経内科助手、七沢リハビリテーション脳血管センター 神経内科医長、医療法人北野朋友会松戸神経内科 診療部長を経て、2002年、代田橋に「くるみクリニック」開院。
西村 知香 院長
くるみクリニック
世田谷区/大原/代田橋駅
- ●精神科
- ●脳神経内科
- ●心療内科
認知症の患者は日々増えているのに、相談する場所がない現実を認識して開院
認知症専門の病院といえば、だいたい大病院のなかにあるものですね。「もの忘れ外来」とか「認知症外来」という名前がついている。けれど、個人病院となると専門と標榜している医院はかなり少ないのが実情です。当院は2002年に開院しましたが、15年たった今もあまり変わりません。認知症の患者は日々増えていて、超高齢化社会でこれからますます増えるのに、クリニックの数は少ないです。やはり認知症という病気が特殊で、患者だけでなく介護者の負担も大きい、大変な病気だからでしょうね。
もとは神経内科を専門としていて、脳梗塞の治療などを主に行っていたんです。でもあるとき役所の認知症相談業務を担当して、多くの認知症患者とその家族が、どこにも相談できないで困っている現状を目の当たりにして、相談できる新しい場所が必要だと痛感して、それで方向転換して認知症専門のクリニックを開院したのです。場所は生まれ育った代田橋にたまたま良い場所があったからという理由ですが、でも慣れ親しんだ地元に貢献したいという気持ちもありました。
個人病院なら、治療だけでない生活と心のケアが可能
大病院の認知症外来は認知症の治療をしてはくれますが、ではどう生活を送っていったらいいのか、介護者はどう対応すればいいのか、などというには相談に乗ってくれません。でも大変なのは、むしろそちらのほうなんです。認知症の症状そのものは薬で進行を遅らせ、落ち着かせることができますが、ではその患者をどう介護していくか、介護者のストレスはどうケアすればいいのか。ここが大変だから認知症は大変なんです。
当院では介護者のケアのほうがメインです。現在、医師のほかにカウンセラーと精神保健福祉士(精神保健福祉領域のソーシャルワーカー)がいて、介護者の心のケアに力を入れています。認知症の介護はとてもきついものです。報われないし、感謝もされないし、ときには暴言をはかれたりするうえ、病気は決して完治しない。ここに、これまでよく知っていた家族が、まるで違う人格になって自分のことも他人のことも忘れていくということも加わるのですから、どんな人でも長く介護しているとまいってしまうものです。ときには介護者のほうが手をあげてしまったり。悪いことだとわかってても、手が動いてしまうんですね。
ですから、そんな介護者の方たちにカウンセリングや相談を行い、生活の質の向上をお手伝いすることが大きな仕事になります。具体的な施設やサービスを案内したり、話をじっくり聞くことで疲れ、迷っている心のケアを行います。現段階では、認知症は治りません。ですが、医師やカウンセラーに話をじっくり聞いてもらい、自分はベストを尽くしているんだと確信できるだけで気持ちは大きく変わるものなのです。自分の行動に自信が持て、また生活を続けることができる。
認知症を患っていても、本人も介護者も“穏やかで気分よく”暮らすことができる
「普通の生活を続ける」、これが認知症の方を介護する生活では大事なことです。「自宅で、普通に、穏やかに暮らせること」が最大の目標です。認知症を患っても患者も介護者も気分良く過ごせる方法というのはある。元気で楽しくやっている方たちがたくさんいるんですよ。これは強く伝えたいことです。「認知症?ああもうだめだね」と即断してしまいがちですが、そうではない。病気を持ちながら、普通に、そして良い気分で暮らすことは可能なのです。実際、こちらでケアをしている介護者の方には「先生、このままでいいと思えるようになりました」と笑顔でおっしゃってもらえることも多く、そんな笑顔を見ると、こちらも本当にこの仕事をやってよかったと思います。こんな方たちと接していると、“毎日を笑顔で暮らす。これって幸せってことだよね”とも思います。
開院して15年。認知症は治らなくても、たくさんのことが進歩している
認知症はいまだ完治しない病気ですが、それでも様々なことが進化したと思います。まず認知症が広く知られるようになり、患者さんが症状の早いうちから検査に来てくれるようになりました。早く見つければそれだけ進行を遅らせることでができるので、早期発見は非常に大切なのです。薬も、5,6年前に効果の高い4種類の薬が発売され、日常をより快適に過ごす助けになっています。それまでなにもしないで1日過ごしていた人が、この薬のおかげで活動的になって軽い食事を作ったり、身の回りのことをできるようになったりするんですね。他に明確な診断基準もできましたし、いくつかの治療法も確立しました。
個人的なことでいえば、この病気について15年勉強し続けてきたおかげで、病気について自信を持って発言できるようになって、それもよいことのひとつ。やっぱりね、自信ないとだめです。患者さんに対して断言できないと、信頼関係も築けない。この病気に関しては、1本にしぼって追求し続けたおかげで、責任もっていろんなことを言い切れるようになったと思います。
これから受診される患者さんへ
繰り返しになりますが、早期発見が大事ですので、ちょっとおかしい?と感じたらすぐに来ていただきたいです。当院ではMRIを備えていますから、診断から治療方針の決定まで1日で行うので、患者さんと介護者の時間と手間は大幅に省かれると思います。副院長は精神科医、カウンセラーもいますので、いろいろな角度から認知症にアプローチが可能です。
さらに、これからは、病気にかかる以前の方たちの、ちょっとした悩みや気がかりにも応えていきたいと考えていますので、そんなご相談でも大丈夫です。
来月からは世田谷区から認可された「認知症カフェ」を院内でオープンします。誰でも参加可能で、ちょっと認知症について話したいな、知りたいなという方にぜひ立ち寄ってほしいですね。代田橋で、気軽に認知症について相談できる場所になれたらいいです。
みんな、同じような人生を歩んで、同じように年をとります。他人事ではなく自分のことでもある、と日々思いながら仕事をしています。みなさんにもそんな意識を持ってもらえたらうれしいですね。
※上記記事は2017年8月に取材したものです。
時間の経過による変化があることをご了承ください。
西村 知香 院長 MEMO
- 出身地:東京都
- 趣味:フラダンスと山登り
- 好きな作家:スティーヴン・キング
- 好きな映画:ホラー映画
- 最近はまった海外ドラマ:「スーパーナチュラル」
グラフで見る『西村 知香 院長』のタイプ
どちらかというと 穏やかで明るく話しやすい先生 |
穏やかでやさしく 話しやすい |
エネルギッシュで 明るく話しやすい |
先生を取材したスタッフまたはライターの回答より
どちらかというと 穏やかで明るく話しやすい先生 |
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穏やかでやさしく 話しやすい |
エネルギッシュで 明るく話しやすい |
先生を取材したスタッフまたはライターの回答より
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