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酒井 和夫 院長

KAZUO SAKAI

21年の開業経験の中で独自の療法を試行錯誤
生きづらい現代で疲れた人たちの灯台になる

東京大学文学部哲学科を卒業後、医療の道を志し、筑波大学医学部卒業。長谷川医院での勤務を経て、1996年「ストレスケア日比谷クリニック」を開院(有楽町駅より徒歩3分)。「不眠症の治し方」「新しい脳内薬品の作り方 16人のカルテ」「日本人研究者が発見したボケの進行を遅らせる薬のすべて」等、著書多数。

酒井 和夫 院長

酒井 和夫 院長

ストレスケア日比谷クリニック

千代田区/有楽町/日比谷駅

  • ●精神科
  • ●内科
  • ●心療内科

働くこと、生きることがつらくなっている。日本の社会のあり方がうつ病を増加させている

酒井 和夫 院長

日比谷に開院して21年、当院はうつ、統合失調症、不眠症、発達障害、摂食障害インターネット依存などをおもに診ています。ドクターは3人、ほかにカウンセラーが3人。僕はうつや摂食障害に強いですね。どんな病気もそうですが、心の病もうつだとはっきりわかる手前で治療するのが大切です。こじらせてしまうとどんどん治りにくくなるので、早めに見つけて早めに治療するのが肝心なのですが、最近はこの病気になる手前で来てくださる患者さんが増えました。精神科、心療内科にかかることが以前より当たり前になったこともありますが、会社に申請するための準備としてかかる方も多いようです。それだけ会社、仕事のストレスでうつになる人が増えている証だと僕は見ています。いわゆるブラック企業だけじゃなく、どんな企業の、どんな職種の人でもまんべんなく具合が悪くなっている。日本の社会全体が人に対して厳しくなっているんでしょうね。
しかも、これは勤め人に限ったことではありません。あるとき、小学生がネットで検索して来たことがありました。両親にも誰にも知られたくなかった、と言って本当にひとりで調べてひとりでここまで来たんです。驚きますよね。なので、当院には小学生から90歳まで、あらゆる人が来られます。それだけ生きるのがしんどい時代だということです。

昔の日本には能力のある人もない人も、同じように生きることができる寛容さがあった

酒井 和夫 院長

職種でいえば、最近はコンサル業の方がかなり増えていますね。でもこれはある意味当たり前で、二十代、三十代の、まだほとんど人生経験のない人にどうやって企業や商店のコンサルティングができるというのでしょうか?普通に考えればわかることです。本来無理なことを仕事として強いているから、不調が生じるのは当たり前。そんな当たり前の考えも、“仕事だから”ということで封殺されてしまっているんでしょうね。
強いていえば商社の方の患者さんは少ないのですが、これは伝統的に商社は福利厚生が手厚い傾向があるからだと思います。そして人を育てようという気風がある。厳しく叱っても根底に育てようという愛情があれば、叱られたほうも納得感があるし、伸びるものです。単なる怒りの発散として罵るからパワハラになってしまう。今の日本の会社はそんなパワハラが充満する状態になりつつあるのではないでしょうか。
つまり人間が変わってきている、ということです。人が変わり、会社のあり方も変わってしまった。能力がない=くび、成果はすぐにだすべし、それが常識になってしまった。昔は能力のある人もない人もみんな同じでした。日本はそういう国だったのです。“あいつはできないな、まあいいか”と許してそのまま居場所をあけておく、そういうことが普通にできる寛容さがありました。そしてそれで不都合もなかったし、格差も生まれなかった。
ですが、グローバリズムという考えが入ってきて、欧米と同じように成果主義を、などと言い出しておかしくなってきた。この間の選挙(2017年10月)でも、どの政党もそれぞれの主張を戦わせていましたが、この“超国家主義・グローバリズム=世界どこでもみな同じ基準で考える”に反対する党はひとつもありませんでした。みな、これでいいと思っているんです。結果、日本人はどんどん働きづらく、生きづらくなっているというのに、です。僕のところに来る患者さんの半分は、社会がもう少しよかったら来る必要はなかっただろうなと思います。

分析、治療、処方…すべて試行錯誤して編み出した独自のやりかたを追求

酒井 和夫 院長

心の病は本人だけでなく、このような社会要因もかなり大きいと考えています。社会状況がどんなふうに人の精神保健に作用するのかと考えて治療するのは、普通の心療内科と少し違うかもしれません。
基本は患者さんの話を聞いて状態を把握し、適切な薬を適量処方するということです。そこは同じ。私は薬について医師に指導する立場の指導医の資格を持っており、抗うつ薬と睡眠薬を適切に選び、処方することにはかなり自信がありますよ。さらに薬以外にも機能性食品も大いに活用することも特徴です。抗うつ、不眠、摂食障害、発達障害にそれぞれ対応するサプリメントを開発して日米の両国で特許を取得してもいます。これは栄養素の開発から行ったもので、例えばうつを改善する低分子キトサンなどですね。通常のキトサンはみな高分子ですので、これとは全く作用が違います。2001年にこの低分子キトサンが精神に良い作用をもたらすという論文を発表し、それをもとにサプリメントを開発したんです。そのほか、心理テスト、カウンセリング、箱庭療法などを状況に合わせて行います。
独自の治療法も多くあります。たとえば最近数が増え続けている摂食障害は、通常の治癒率は1割未満ですが、当院では8.5割です。これは海外からプロザックという薬を輸入し、処方しているから。重症の摂食障害はカウンセリングでは治りにくい。薬が最も効果的なのです。プロザックの効果はアメリカで正式に認証されているのですが、日本ではまだ許可が降りていず、独自に輸入しているのです。日本では薬が使えず他の方法で治そうとするから治癒率が1割未満になってしまうというわけです。このように一般的なやり方ではなく、自分でやり方を見つける、作っていくので、自ずと独特のスタイルになるのでしょう。開業以来、“なにかやれることはないのか”と、様々な療法を試行錯誤して探り、ひとつひとつ確立してきました。これこそ開業医の醍醐味なのです。

大事なのは今と未来。患者さんにぴたりとはまる言葉を探すのが仕事

患者さんとの接し方も、一般的に言われていることと少し違うところがあるかもしれません。患者さんの話を聞くことは基本です。ですが、ひたすらに聞いて同情して、だけではなにも解決できないとも考えています。そして真の問題は、患者さんが長々と話すこととは違うところにあることが多い、というのも長年の臨床経験で得た知識です。ですからただ漫然と聞いて、頷いているだけでは改善には結びつかない。
患者さんにぴったりの言葉、というものがあるんです。その一言で、これまでの考えが吹き飛び意識の持ち方が変わるような、頭上に晴れ間が広がるような言葉っていうものがある。それを言ってあげることが医師の役目です。もちろん、それは人によって違うので、こうすればその言葉が得られるという杓子定規なマニュアルはありません。簡単に言えば勘に頼るしかない。ただ、僕が医学の前に哲学を学んでいたことは、より広く世界と人を捉えられるという意味で役立っているのかもしれません。
多くの患者さんは、過去と現在のことを話します。こんな環境で育ったから、とか、こんな経験をしたから…等。けれど、僕は大事なのは現在と未来の話をすることだと思っています。人間とは過去に生きるものではなく、今と未来に生きるものだから。だからどうすればいい可能性を実現できるか、そういうことを話し合っていきたい。そして心が疲れて狭く頑なになった彼らの世界に、こちらから光を当てて広げていきたい。いわば灯台のようなものかな、ここがそんな場になれるといいと思っているんです。

これから受診される患者さんへ

このきつい世の中で病まずに生きるために必要なことは、とにかく“楽しく”生きることです。楽しみがやってくるのを待つのではなく、自分で自分を楽しませることを、どうやって見つけていけるか、それが大事です。仕事だって、楽しまなければやってられない。つまらなくてしんどくて当たり前かもしれないが、そのなかにも楽しみは見いだせる。そして、仕事したら、同じくらい遊ばなくちゃいけません。そんなことも話し合えたらと思います。具合の悪い人、悪くなりかけた人、どちらの方もどうぞ。日比谷シャンテの向かいと、便利な場所にありますので気軽に訪れてください。

※上記記事は2017年10月に取材したものです。
時間の経過による変化があることをご了承ください。

酒井 和夫 院長 MEMO

精神科専門医

  • 出身地:東京都
  • 趣味・特技:ヨガ、オーディオ、アナログ・レコード鑑賞/囲碁 七段くらいの腕前です。
  • 愛読書:ギリシャ、ローマ時代の古典作品
  • 好きな音楽:クラシック クリニック内でもかけています。

グラフで見る『酒井 和夫 院長』のタイプ

穏やかでやさしく話しやすい先生

穏やかでやさしく
話しやすい
エネルギッシュで
明るく話しやすい

先生を取材したスタッフまたはライターの回答より

穏やかでやさしく話しやすい先生
穏やかでやさしく
話しやすい
エネルギッシュで
明るく話しやすい

先生を取材したスタッフまたはライターの回答より

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