PHCおぎくぼ在宅診療所
竹井 清純 院長の独自取材記事
住み慣れたこの街で、あなたらしい「健やかさ」を支えたい
竹井 清純 院長タケイ キヨズミ
東京医科大学医学部卒業。大阪大学旧第一外科に入局。六甲病院でホスピス研修を経て、市立芦屋病院緩和ケア病棟の立ち上げを行う。日本赤十字社医療センター緩和ケア科副部長を経て、訪問診療に携わり、2026年に『PHCおぎくぼ在宅診療所』を開院。
在宅でもできる限りの症状コントロールや情報提供をしていきたい
大阪大学第一外科に入局し、小さな病院に派遣されていたこともあり、早期から術者として手術技能向上に邁進してまいりました。同時に、一番初めに受け持った患者さんが、乳がん末期の患者さんで、がん性リンパ管症を主訴に緊急入院になったことをきっかけに受け持ちとなりました。上級医の指示に従い抗がん剤のメニューを検討し、その後、患者さんと相談をしながら治療中止のタイミングから呼吸困難を中心に症状コントロールを行いました。今のように緩和医療に関する教科書はほとんどなく、使えるオピオイドも限られており、患者さんとどのようにしたいかを相談し、手探りのコントロールをしながら最期を看取りました。今では考えられないかもしれませんが、医者も看護師も死にゆく患者さんを直視できず、使用する薬もペンタジンが中心。モルヒネの使用もみんな抵抗ある時代でした。全身性の浮腫や胸水が溜まっても、亡くなる瞬間まで高カロリー輸液や輸血をされている方も大勢いました。そのような全身管理をしている中、非常に心苦しく、診断から治療、看取りまでする外科医であれば、終末期の症状コントロールや管理も一人前にできなければおかしいと疑問を持つようになったのをきっかけに、医局を退局し六甲病院の緩和ケア科の門を叩きました。宝塚市立病院の緩和ケア病棟の立ち上げのサポートに行った際、症状コントロール外来を開始。オピオイドの導入目的に在宅の先生ともやり取りを行いました。日本赤十字社医療センターでは師事する的場元弘先生(元国立がん研究センター中央病院緩和ケア科長)に声を掛けていただき副部長に就任しましたが、緩和ケアチームでは先進医療に伴う症状コントロールを中心に抗がん剤の副作用対策や放射線治療中の疼痛コントロールなど積極的に行ってまいりました。
大学病院以外ではありますが、がん治療病院での特殊な症状コントロールから療養型ホスピス、在宅緩和ケアまでを経験してきており、在宅でもできる限りの症状コントロールや情報提供をしていきたいと思っています。
医療の狭間を埋める“地域の受け皿”として―緩和ケア専門外来の役割
この度、『PHCおぎくぼ在宅診療所』を開設した大きな理由の一つは、緩和ケア専門外来の必要性を長年感じ続けてきたことにあります。
これまで緩和ケア病棟や緩和ケアチーム、そして訪問診療の現場で多くの患者さんと関わってきました。その中で、がん治療を続けながら抗がん剤の副作用や体調の変化に悩んでいても、病院へ相談すること自体が大きな負担になっている方を数多く見てきました。受診しようと思っても待ち時間が長かったり、担当医とすぐに相談できなかったりと、患者さんにとっては想像以上に高いハードルがあります。
また、治療が終了したあと、「これからどこに相談すればよいのかわからない」と不安を抱える方も少なくありません。病院での治療と訪問診療の間には、どうしても空白の期間や支援の届きにくい領域が生まれます。私はその狭間を埋める存在が地域に必要だと考えてきました。
さらに、病状の変化に伴い、訪問診療やホスピスについて考える時期を迎えても、すぐに気持ちを整理できるとは限りません。だからこそ外来で関係性を築きながら、患者さんやご家族の思いを丁寧に伺い、その方に合った選択肢を一緒に考えていく場が必要と考え、訪問診療と並行する形で緩和ケア専門外来を構えるに至りました。
杉並区は私自身にとって縁の深い地域です。この場所で地域医療に貢献しながら、患者さんを支える新しい受け皿になれればと考えています。
症状を和らげてこそ、本当の支援が始まる
私が診療で最も大切にしているのは、患者さんの症状をしっかりコントロールすることです。
緩和ケアというと「寄り添う医療」という言葉がよく使われます。しかし、強い痛みや息苦しさ、吐き気などの苦痛を抱えたままでは、将来のことや家族との時間のことを考える余裕は生まれません。限られた時間をどう過ごしたいか、自分らしく生きるとは何かを考えるためには、まず身体のつらさを軽減することが必要です。
私が六甲病院で緩和ケアの研修を受けた際、一番最初に教わったのが「症状コントロールができて初めて緩和ケアが始まる」という考え方でした。今もその教えを診療の軸にしています。
また、訪問診療ではがんの患者さんだけでなく、認知症や慢性心不全をはじめとする慢性疾患などを抱える方々とも向き合っています。どの病気であっても、その人らしい生活を支えることが大切です。持ち運び可能な骨密度測定器や耳で酸素飽和度を測れるパルスオキシメーターなども導入し、通院が難しい方でも適切な評価を受けられる環境づくりに努めています。病気だけを見るのではなく、患者さんの暮らし全体を支えることが在宅医療の役割だと考えています。
患者さんが納得できる道をともに探す
緩和ケアでは、患者さんやご家族が人生の大切な選択を迫られる場面が少なくありません。
医療者として「こちらの方が良い」と考える選択肢があったとしても、それを一方的に勧めることが最善とは限りません。大切なのは、患者さん自身が納得して選択できることだと思っています。
私たちの役割は、どのような道を選んだとしても支えられるよう、あらかじめ複数のレールを準備しておくことです。予定通りに進まないことがあっても、その時々の状況に応じて次の選択肢を提示しながら支えていく。それが緩和ケアの本質だと考えています。近年は「人生会議(アドバンス・ケア・プランニング)」の存在が広く知られるようになりました。人生の終末を考えることは意義のあることですが、人の気持ちは状況によって変化するものです。今日の考えと数か月後の考えが違うことも自然なことなのです。
だからこそ私は「説得」ではなく「納得」を大切にしています。医療者の考えに合わせてもらうのではなく、患者さんやご家族が自分自身で納得できる形を一緒に探していく。その積み重ねが、安心につながるのだと思います。
今後は診療だけでなく、これまで培ってきた経験を次世代へ伝えることにも力を入れていきたいと考えています。将来的には医学生や研修医の教育にも関わりながら、緩和ケアや在宅医療の価値を広げていければと思っています。
これから受診される患者さんへ
緩和ケアの現場にいると、患者さんご本人以上に、ご家族が大きな不安を抱えている場面に数多く出会います。私自身、緩和ケア病棟で不安や抑うつに関する調査を行ったことがありますが、その結果、ご本人よりもご家族の方が強い不安を抱えているケースが少なくありませんでした。それは当然のことだと思います。痛みや苦しさは本人にしかわかりません。周囲の人は想像することはできても、実際に同じように感じることはできないからです。わからないことは不安になりますし、経験したことのない出来事ほど大きな恐怖につながります。
だからこそ私たちの役割は、その不安を少しでも軽くすることだと思っています。病状や今後の見通しをわかりやすく説明し、困っていることを一緒に整理しながら、患者さんとご家族の肩の荷を少しでも下ろせるよう支援していきたいと考えています。
在宅医療は、病院のように「正解」を追い求める医療とは少し異なります。患者さんやご家族の生活を中心に据え、その中で医療をどう活かしていくかを考える落としどころを探る医療です。だからこそ、小さな悩みでも遠慮なく相談していただきたいと思います。
患者さんはもちろん、ご家族も含めて安心して過ごせる環境を整え、その人らしい人生を支えるお手伝いができれば幸いです。
※上記記事は2026年5月に取材したものです。時間の経過による変化があることをご了承ください。
竹井 清純 院長MEMO
- 出身地:
- 大阪府
- 出身大学:
- 東京医科大学
- 趣味:
- 散策、食べ歩き、観劇、ライブ鑑賞
- 好きなアーティスト:
- Sting、Maroon5
- 好きな映画:
- 『ショーシャンクの空に』『かもめ食堂』
- 好きな言葉・座右の銘:
- 「ピンチはチャンス」
在宅療養と緩和ケアで、ご本人と家族の不安に寄り添う診療所
PHCおぎくぼ在宅診療所は、荻窪駅から徒歩5分の在宅診療所です。訪問診療を中心に、内科・緩和ケア内科・外科に対応。院長の竹井清純先生が、ご本人らしい暮らしを大切にしながら、痛みや不安、在宅での看取りまで家族とともに支えます。多職種と連携する体制も安心です。
在宅療養と緩和ケアで、ご本人と家族の不安に寄り添う診療所
PHCおぎくぼ在宅診療所は、荻窪駅から徒歩5分の在宅診療所です。訪問診療を中心に、内科・緩和ケア内科・外科に対応。院長の竹井清純先生が、ご本人らしい暮らしを大切にしながら、痛みや不安、在宅での看取りまで家族とともに支えます。多職種と連携する体制も安心です。