村中 志朗 院長
SHIRO MURANAKA
動物医療の根源である信頼関係を大切に、飼い主さんと同じ気持ちで診療に臨む。
大学卒業後、都内の病院で研鑽を積み、1984年、広尾駅に近いこの地で開業。
村中 志朗 院長
広尾動物病院
港区/南麻布/広尾駅
- ●犬
- ●猫
生きものに接する機会が多かった子供時代。
私は四国の山間で育ったものですから、小さい頃からザリガニを捕ったり、生きものに接する機会が多くありました。本当に小さな頃のことですが、息も絶え絶えで田んぼに倒れていた犬に野原の薬草をすり潰して飲ませた記憶があります(苦笑)。当時のことですから、具合が悪い人がいれば薬草を煎じて対処するという習慣が残っていました。それを真似て、「この子も助けることが出来る」と子供ながらに考えたのです。今から考えますと、それが獣医師となる最初のきっかけのようなものであった気がしますし、物心がつく頃にはこの道を目指していたような次第です。
大学を卒業後は外科の研究室に勤務し、その後、都内の病院で研鑽を積み、1984年にこの地での開業と相成りました。まだその当時、動物を治療するためにお金を出すという感覚は希薄だったように思います。その点、この辺りは外国の大使館も多く、他の地域と比較してみればより適地だと思いましたし、自分が勉強してきたことを実践していくという意味において、ここ以上の場所はないと考えたわけです。
インフォームド・チョイスを実践し、治療を選ぶ権利をまもる。
インフォームド・コンセントという言葉はもはや当たり前のように浸透してきました。これはつまり、お医者さんが患者さんに対してきちんと説明をおこなうことですが、インフォームド・チョイスはそこからさらに進み、複数の治療の選択肢を提示し、飼い主さんの治療を選ぶ権利を擁護するものです。
病気だけを見て、「これは手術しかない」「この治療法に限る」というのは、医者のエゴに過ぎません。飼い主さんの中にはどうしても手術を避けたいという方もいらっしゃるし、高齢でリスクが高いケースもあります。我々は病気だけを見ていてはだめなのです。動物を診て、飼い主さんを診て、全てをトータルに考えて最も良い治療方法を共に選んでいくという姿勢が求められると考えています。
その治療の選択肢の1つとして二次診療施設への紹介があります。自分のところだけで治療を完結させようとするのは感心しません。もちろん、完結出来るものはそうであって良いんですよ。しかし、それは自分の守備範囲をわきまえたものでなくてはなりません。
非常に難易度の高い症例に遭遇したとしましょう。自分はそれを1、2度経験したことがある。しかし他を見渡せば、その手術を300回、500回と経験した人がいる。飼い主さんの気持ちになってみれば、当然後者を選択するべきなのです。市井の開業医である私たちは病気を診ることと同時に、高度医療への橋渡し役を務める義務があると私は考えています。
一秒でも長く飼い主さんと一緒にいられるように。
入院は動物にとって非常にストレスの掛かるものです。まったく同じではないにしろ、ほぼ同等の治療が可能ならばお家での治療がベターなことは言うまでもありません。無論、最初の検査等にはいらしていただかなくてはなりませんが、その後の継続治療については在宅で充分なケアが可能です。ペット達が一秒でも長く飼い主さんと一緒にいられることは非常に大切なことであり、その意味において在宅医療に掛かってくる期待は大きなものがあります。
私も立ち上げに関与した日本動物看護学会は、その在宅医療・終末期医療を担う人材を育てるために発足しました。数年前から統一試験を実施し、動物看護師の好位平準化を目指した取り組みを続けています。
ただ、資格=飼い主さんの安全につながるかと言えば、必ずしもそうではありませんね。少々照れくさいですが(笑)、それは、愛に他なりません。どれだけその子に対する気持ちが強いか。それを感じられる人間は飼い主さんにも動物にも信頼されます。特に在宅医療やターミナルケアは、それがなければ役割を全うすることはかなわないのです。
NPO法人アナイスにて災害時動物救護活動に尽力。
2000年の三宅島の噴火により、合わせて300頭以上のワンちゃんやネコちゃんが都内に避難してきました。私たちは被災動物の保護や治療を担当したわけですが、それを機に、いつ起こるかわからない災害を視野に発足されたのがアナイスです。
災害時の避難をテーマとした場合、その鍵を握るのは平時からの備えです。それは単純に物を備えるということだけではなく、普段から予防やしつけに留意し、動物の社会化を進めていくことなのです。考えてもみてください。避難場所に行けば、動物が苦手な人もいればアレルギーの方もいるわけで、しつけも行き届いてない状態で誰が受け入れてくれるでしょうか。アナイスでは、準備・避難・責任という3本の柱を軸に、皆さんに必要な情報を届ける活動をおこなっています。
これから受診される患者さんへ。
動物は飼い主さんの精神状態にとても敏感です。それはどういうことかと申しますと、飼い主さんが過敏であればあるほど、動物はナーバスになっていくということです。難しいことだとは思いますが、出来るだけ平易な心を保ち、しっかりと治療に向き合っていただきたいですね。
動物医療は信頼の上に成り立つものであり、それを考えれば、モンスターペイシエントの問題に言及しないわけにはまいりません。モンスターと呼ばれている人達の過剰な反応がいかに医療を疲弊させているか。ほんの一部の人のために、適切な医療が充分におこなわれないという事態に発展しています。皆様と共にある獣医療を今後も継続・発展していくために、この問題に対して断固たる態度で臨んでいきたいと私は考えています。
※上記記事は2014年8月に取材したものです。
時間の経過による変化があることをご了承ください。
村中 志朗 院長 MEMO
- 出身地:愛媛県
- 趣味:野菜作り
- 愛読書:北国(井上靖)
- 好きな映画:シンドラーのリスト
- 好きな言葉:湛然不動、人生ぼちぼち
- 好きな音楽:ジャズ
- 好きな観光地:祇王寺
グラフで見る『村中 志朗 院長』のタイプ
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穏やかでやさしく 話しやすい |
エネルギッシュで 明るく話しやすい |
先生を取材したスタッフまたはライターの回答より
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