トータス往診クリニック
大橋 晃太 院長の独自取材記事
在宅医療の可能性を広げ、自分らしく過ごせる医療を地域で支える
大橋 晃太 院長オオハシ コウタ
東京大学大学院工学系研究科博士後期課程修了。博士(工学)取得。東京医科歯科大学(現:東京科学大学)医学部医学科 学士編入学/卒業。みさと健和病院、国立病院機構 東京医療センター(血液内科/緩和ケア科)、国立がん研究センター東病院 血液腫瘍科(外来担当)勤務を経て、2016年5月に『トータス往診クリニック』を開業。日本血液学会血液専門医、日本緩和医療学会緩和医療専門医・指導医、日本在宅医療連合学会専門医・指導医、東京科学大学医学部臨床教授、聖マリアンナ医科大学医学部客員教授。
闘病の経験が導いた、在宅医療という使命
私が医師となり、在宅医療に取り組むようになった背景には、二つの大きな出来事があります。ひとつは、大学院在学中に自身が白血病を患い、入院生活を送った経験です。病室では、家に帰りたいと願いながらも、輸血などの医療が必要なために退院できない患者仲間の姿を多く見てきました。「家族に迷惑をかけてしまうから帰れない」と語る方の言葉を聞きながら、なぜそれが迷惑やわがままになってしまうのだろうと、当時の私は強い憤りを覚えたものです。もし自分が医師として働くことができるなら、この状況を変える一助になりたい――そう思ったことが、医師を志す原点になりました。
そしてもうひとつは、医師として患者さんと向き合うようになってからの出来事です。17歳の患者さんが治療の途中で病状が進み、残された時間が限られた状況となりました。誕生日だけでも自宅に帰してあげたいというご家族の願いがありましたが、血小板輸血が毎日必要で、当時は在宅でそれを担える体制を見つけることができなかったのです。このような臨床医としての経験を通して、医療的なケアが必要な方でも、自宅で過ごす時間を支えられる医療の必要性を強く感じるようになりました。
狛江で開業したのは、実家のある世田谷からも近く、思い出のあるなじみ深い地域だったからです。当時、この地域には訪問診療のクリニックも多くなく、在宅医療の必要性を感じました。医療的なケアが必要な方でも、自宅で安心して医療を受けながら過ごせる環境をつくりたい――クリニック名の「トータス」は、ラテン語で「全体」を意味する「Totus」に由来しています。病気だけでなく、その人全体を診る医療を大切にしていきたいと思っています。
その人らしい生活を支える医療を
特定の疾患に限定せず幅広く対応していますが、患者さんの中ではがんを患う方の割合が多いのが特徴です。治療と生活の両立を大切にしながら、輸血や抗がん剤治療なども含め、穏やかに過ごすために必要な医療であれば、できる限り在宅で継続できる体制を整えています。特に力を入れているのは支持療法といわれるもので、がんそのものの症状だけでなく、治療による副作用や合併症、後遺症による不調を和らげるための予防や治療、ケアを丁寧に行っています。感染症に対する抗菌薬の投与や、貧血や血小板減少に対する輸血、吐き気や嘔吐を抑える薬の使用など、在宅でも適切な医療が受けられるようにしています。
私が大切にしているのは、「治療を諦めて家に帰る」のではなく、「必要な医療を受けながら安心して自宅で過ごせる環境をつくる」という考え方です。家に帰りたいのは、最期を迎えるためではなく、自分らしく生きるために他なりません。在宅医療とは、病気と付き合いながらも生活の質を高く保ち、その人らしい時間を支える医療と考えています。
地域に根ざしたチーム医療で在宅医療を支える
現在、クリニックには消化器外科や緩和ケア、腫瘍内科、リハビリテーションなど、それぞれ専門性を持つ医師が集まっています。さらに整形外科や神経内科、麻酔科などの医師にも非常勤で協力していただき、多角的な医療が提供できる体制を整えています。今後は新たな医師の参加も予定しており、チームとしての力をさらに高めていければと思っています。
また、地域とのつながりも大切にしています。隣接する保育園との交流や、中学校でのがん教育など、医療機関として地域に開かれた活動にも取り組んできました。さらに大学病院との教育連携を通じて、医学生や看護学生、研修医の受け入れも積極的に行っています。次の世代に在宅医療の魅力や可能性を伝えていくことも、私たちの役割と考えています。
在宅医療は、病院とはまた違った形で人の人生に寄り添う医療です。地域の中で生活を続けながら医療を受けられる環境を整え、その人らしい時間を支えていく。そんな医療を、これからも地域の皆さんと一緒につくっていきたいと思っています。
地域の中で最期まで過ごせる「ホスピス」という選択肢
終末期の患者さんを診る機会も多く、看取りに関わることも少なくありません。ただ、ご自宅で最期まで過ごしたいという思いがあっても、ご家族の介護力や経済力、住環境などの事情によって難しくなるケースもあります。そうした状況の中で考えているのが、地域の中に小規模なホスピスをつくるという取り組みです。
それは病院でも自宅でもない、その中間にあるような場所です。生活の延長として過ごせる空間でありながら、医療やケアがしっかり提供できる場所。私たちが構想しているのは、5人程度の小規模なホスピスです。人数を絞ることで、一人ひとりに丁寧に向き合い、それぞれの生き方や個性を大切にした時間を支えたいと考えています。
ホスピスでは、ご本人やご家族が一緒に過ごせるスペースを確保し、必要に応じて共に食事をとることができる大きなテーブルなども設ける予定です。もちろん過ごし方は人それぞれで、静かに自分の時間を大切にしたい方もいれば、誰かと食卓を囲みたい方もいるでしょう。そうした多様な希望を受け止められる場所にしたいと思っています。全国ホームホスピス協会の認定を受けることを目標に、我々のホスピス「トータスビレッジ」の計画を進めています。
これから受診される患者さんへ
在宅医療については、ホームページやインターネットだけでは伝わりにくい部分も多くあります。そのため、まずは直接連絡をして話をしてみることが大切だと思います。少し手間に感じられるかもしれませんが、対面で話をして顔の見える関係をつくることが大切ですし、実際に会ってみると、印象が変わることもあるでしょう。
医師にもさまざまなタイプがあり、厳しく指導してくれる先生(当院にはいませんが。)が合う人もいれば、穏やかで意見を聞いてくれる先生が安心できる人もいます。患者さんやご家族によって「合う医師」は異なります。だからこそ、最初の出会いを大切にしながら、自分に合った医療機関を丁寧に選んでいただければと思います。
※上記記事は2026年2月に取材したものです。時間の経過による変化があることをご了承ください。
大橋 晃太 院長MEMO
- 出身地:
- 東京都
- 出身大学:
- 東京医科歯科大学(現:東京科学大学)
- 趣味:
- 野球観戦
- 好きなチーム:
- 広島カープ
- 好きなこと:
- 亀との交流
- 好きな言葉:
- 「命の力には、外的偶然をやがて内的必然と観ずる能力が備わっているものだ」(作家の小林秀雄さんの言葉です。命の強さを信じる言葉だと思っています)
| 電話 | |
|---|---|
| 所在地 |
東京都狛江市岩戸南4-22-7 メゾン・サンライズ・アイ102 |
| 駅名 |
|
| 駐車場 |
なし |
| WEB | |
|
特徴 |
在宅診療(訪問診療・往診) / 女性医師在籍 / 男性医師在籍 / マイナンバーカード保険証利用 / 日本内科学会総合内科専門医 / 日本血液学会血液専門医 / 日本緩和医療学会緩和医療専門医・認定研修施設 |
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