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アンギオ室(血管造影室)とは?クリニックでもアンギオ検査を実施する方法

血管や臓器の異常を詳しく調べるときに実施する「アンギオ検査」は、重要性が高まっています。

 

とくに、血管病変の早期発見や、カテーテル治療における正確な診断を行える点が魅力です。

 

従来は大規模な設備が必要で、病院のアンギオ室でしか実施できない検査とされていました。

 

しかし、近年は医療機器の進化により、クリニック環境でも導入が現実的になりつつあります。

 

そこで本記事では、アンギオ室の基本構造や設置条件を整理した上で、クリニックでもアンギオ検査を実施する方法を紹介します。

 

クリニックでもアンギオ検査を実施できるフィリップス・ジャパン社の「モバイルCアーム」についても解説しているので、参考にしてみてください。

アンギオ室(血管造影室)とは?

アンギオ室(血管造影室)とは?

アンギオ室(血管造影室)とは、狭窄や閉塞の評価や動脈瘤や血管奇形の確認などを行う際に実施する「アンギオ検査」を行うために設計された専用の医療空間です。

 

高度なX線透視装置の設置や放射線防護構造など、さまざまな条件を満たす必要があり、一般的には中規模以上の病院や大学病院で整備されています。

 

近年では、小規模施設でも導入可能なコンパクト医療機器が登場しており、クリニックでもアンギオ検査が実施可能です。

 

アンギオ検査に関しては、下記リンクの記事で詳細に解説しているため、アンギオ検査の導入を検討している方は本記事と合わせて確認してみてください。

 

参考:アンギオ(血管造影)とは?検査でわかることや導入メリットなど徹底解説

アンギオ室を作るときの主な条件

アンギオ室を作るときの主な条件

アンギオ室を作るときの主な条件は、5つあります。

  1. 構造・面積要件
  2. 放射線防護(法的要件)
  3. 設備・環境要件
  4. 動線・レイアウト
  5. 清潔管理・安全対策

それぞれの内容について解説します。

構造・面積要件

アンギオ室は、検査を実施する専用の医療機器が大きく、可動範囲が広いため十分な天井高と床面積が必要です。

 

一般的には、40~60㎡(およそ12~18坪)が目安となっています。

 

また、床構造は装置の重量(約1~2t)に耐えられる強度が必要で、防振構造にも考慮しましょう。

 

壁面や天井には、専用機器のアームやモニターを設置するため、耐荷重設計や配線ルートの確保も重要です。

放射線防護(法的要件)

アンギオ検査では、X線を使用するため「医療法施行規則」やこれに関連する医療放射線防護の基準に基づく防護対策が必須です。

 

たとえば、X線漏洩を防ぐために、鉛やバリウム入り石膏ボードなどによる遮へい壁の設置が必要になります。

 

設計段階では、診療放射線技師などの専門家による、放射線防護を目的とした線量計算が不可欠です。

 

また、操作室と検査室を分ける構造で、医師や技師が安全に観察・操作できる環境の確保が求められます。

 

さらに、医療法に基づく放射線管理区域には、標識の掲示や立ち入り制限、そして5年間の被ばく線量の記録の保存などが義務付けられています。

 

そのため、アンギオ室を作るときは、医療法施行規則に基づき、遮へい壁の設置や、専門家による線量計算を含む厳格なX線防護措置と放射線管理区域の法令順守が大切です。

設備・環境要件

アンギオ室には、診断精度と安全性を確保するために、さまざまな設備の整備が必要です。

 

主に設置するべき設備は、以下のとおりです。

  • X線透視装置(DSA装置・Cアーム)
  • 造影剤自動注入装置(インジェクター)
  • 生体情報モニタ(ECG・血圧・SpO₂)
  • 酸素・吸引・電源・非常電源の配管設備
  • 天井吊りモニター・カテーテル台・機器棚

また、空調に関しても、カテーテル治療における感染リスクを低減し、無菌環境を維持するために、清浄度クラス10,000(ISO 7)相当が推奨されます

動線・レイアウト

アンギオ室を作るときは、患者・スタッフ・機器の導線を明確に分ける設計が理想です。

 

たとえば、検査室・前処置室・操作室・機械室の配置を意識しましょう。

 

また、緊急時に救急カートやストレッチャーがスムーズに出入りできるように、1.2m以上の導線幅を確保するのがおすすめです。

 

操作室からは全体が見渡せる視界を確保し、医師・看護師・放射線技師が連携しやすいレイアウトを意識してみてください。

清潔管理・安全対策

アンギオ室はカテーテルを使用するため、清潔管理や感染対策、安全性の確保が欠かせません。

 

とくに、以下のポイントを意識しましょう。

  • 手術室レベルの清潔ゾーニング(清浄度クラスⅢ:準清潔区域以上)
  • HEPAフィルタ付き換気システムによる陽圧環境
  • 定期的な床・壁・装置の清拭と微生物検査
  • 緊急対応に備えた蘇生装置・除細動器・酸素ボンベの常備
  • 万一の造影剤アレルギーや穿刺合併症に対する対応マニュアルの整備

清潔管理と安全対策を意識して、安全で効率的な検査・治療を行うようにしてください。

 

参照:「急性期病院における新型コロナウイルス感染症アウトブレイクでのゾーニングの考え方」厚生労働省

アンギオ室がないとアンギオ検査はできない?

アンギオ室がないとアンギオ検査はできない?

アンギオ検査は、一般的にはアンギオ室で行われています。

 

しかし、アンギオ室にはさまざまな課題があり、クリニックでの導入が難しいと考えられています。

 

なぜ、クリニックでは導入が難しいのか、理由や課題を解説しているので、参考にしてみてください。

  1. 設備コスト・スペースの課題
  2. クリニックで導入が難しい理由

設備コスト・スペースの課題

アンギオ検査は一般的にアンギオ室で行われますが、その設置コストやスペースが課題となっている病院・クリニックは少なくありません。

 

アンギオ室を設置するには、専用の装置やスペースが必要で、高額な装置投資や防護工事費が発生します。一般的な固定式アンギオ装置だと、おおよそ数千万円から1億円を超えるケースもあります。

 

また、鉛遮へい壁や専用の空調整備など、放射線防護工事に数百万円単位のコストも必要です。

 

ほかにも、装置の保守や点検、法定検査費用などを含めると、小規模医療機関では初期投資とランニングコストの負担が大きいという点が課題です。

クリニックで導入が難しい理由

クリニックでアンギオ室の導入が難しい理由は、設備コストやスペースの課題の他に、管理体制の複雑さや維持管理・法定点検の負担が挙げられます。

 

アンギオ検査で導入する場合には、放射線取扱主任者(またはそれに準ずる者)の選任や設置・変更・廃止時の行政届出、定期的な漏洩線量測定の実施と記録保存が必要です。

 

また、アンギオ検査は高出力のX線を使用するため、X線装置の性能検査や防護設備点検など法定点検の定期的な実施が欠かせません。

 

そのため、専任担当者が居ないクリニックだと管理が難しく、負担になりやすい傾向にあります。

 

加えて、造影剤やシリンジポンプ・インジェクターなどのメンテナンス・消耗品費の管理も必要です。

 

維持コストや管理業務の多さから、少人数運営のクリニックでは過大な負担になりやすいです。

アンギオ室がなくても大丈夫!クリニックでもアンギオ検査を実施する方法

アンギオ室がなくても大丈夫!クリニックでもアンギオ検査を実施する方法

アンギオ室を作るのが難しいと感じるクリニックでもアンギオ検査の代替となる血管の評価を行う方法は、主に3つあります。

  1. マルチスライスCT装置でCT血管造影をチェックする
  2. MRI装置で血流信号を利用し血管像を確認する
  3. 超音波で血流の方向や速度を可視化する

それぞれの方法について解説します。

マルチスライスCT装置でCT血管造影をチェックする

マルチスライスCT装置では、静脈から造影剤を急速に静脈注射し、その造影効果を利用して撮影することで、血管構造を立体的に描写できます。

 

マルチスライスCT装置で得られたデータを3D再構成することで、血管の狭窄・閉塞・動脈瘤の有無を高精度に評価することが可能です。

 

たとえば、頸動脈狭窄症の診断や心臓CTによる虚血性心疾患のスクリーニングを行いたいときに向いています。

 

また、近年登場している64列以上のCT装置であれば、短時間で広範囲の撮影ができるほか、造影効果のピークを逃しません。

 

ただし、造影剤腎症や放射線被ばくのリスクを考慮し、適切に管理することが大切です。

MRI装置で血流信号を利用し血管像を確認する

MRI装置では、血流信号を利用して血管像を描出することが可能です。とくに、TOF法やPC法といった手法を用いた非造影MRAは、造影剤を使わず血管の形態を評価できます

 

具体例として、頭頸部MRAによる脳動脈瘤や動脈狭窄の評価をしたいときや、腎動脈・下肢動脈などの血流異常のスクリーニングを実施したいときにおすすめです。

 

ただし、撮影時間が長く、金属インプラント患者では使用制限がある点を考慮しましょう。

超音波で血流の方向や速度を可視化する

超音波装置を用いた血管評価(血管エコー)は、クリニックでも実施しやすいです。血管エコーは、血管壁の形態だけでなく、血流方向や速度、乱流の有無などをリアルタイムで観察できます

 

たとえば、下肢静脈瘤・深部静脈血栓症(DVT)の診断や、頸動脈エコーでのプラーク評価または血流速度測定を行いたいときに向いています。

 

とくに、ベッドサイドや外来処置室でも実施できるため、フォローアップ検査にも最適です。

 

ただし、深部血管や骨の影になる部位では描出が難しいなどの制限があります。

アンギオ室がなくても大丈夫!フィリップスの「モバイルCアーム」ならクリニックでも実施できる

アンギオ室の設置が難しいときはフィリップジャパン社の「モバイルCアーム」がおすすめ

アンギオ室の設置が難しい病院・クリニックには、フィリップ・ジャパン社の「モバイルCアーム」がおすすめです。

 

フィリップ・ジャパン社のモバイルCアームは、省スペースかつ軽量設計で開発されており、小規模な手術室や既存の処置室でも使用できます。

 

また、装置にはキャスターが付いているため、院内での自由な移動が可能です。

 

とくに、モバイルCアームのZenition 90モデルは、高画質かつ低被ばくを両立させた仕様で、血管造影においても明確な血管像を描出しながら、患者やスタッフのX線線量を抑えられる設計となっています。

 

さらに、血管造影検査だけでなく、整形外科における骨折整復術や、疼痛管理における神経ブロックなど、幅広い手技に使えるため、クリニックにおける装置の多目的利用(使い回し)が可能です。

 

装置導入のコストを抑えながら、診断・治療の質を担保したいという医療機関に向いているでしょう。

 

フィリップジャパン社のモバイルCアームの公式サイトはこちら

アンギオ室の特徴や設置条件のまとめ

まとめ:アンギオ室がなくてもアンギオ検査は実施できる!

アンギオ室がなくても、アンギオ検査の代替となる血管の評価は可能です。

 

また、アンギオ室の設置はクリニックでは難易度が高いですが、フィリップ・ジャパン社のモバイルCアームを導入すると、既存の処置室や手術室でもアンギオ検査ができます。

 

少ない件数ながらも質を担保した診断・治療を目指しているクリニックは、フィリップ・ジャパン社のモバイルCアームをチェックしてみてください。